『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪?』

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トレバー・ノア

アパルトヘイトが巧妙だったのは、圧倒的多数の黒人同士を、反目しあうよう仕向けていたことだ。英語の「分離(アパート)」「憎悪(ヘイト)」とたまたま音が同じだけど、まさにその通りだった。とにかく、グループに分け、憎みあわせておけば、管理しやすいってわけだ

普通、子供というものは両親の愛の証だけど、僕の場合は両親の犯罪行為の証だった。オヤジといっしょにいられるのは家の中だけ。家を出たら、オヤジは僕たちとは通りの反対側を歩かなければならなかった

「家に男がいないからって、夫がいないわけじゃないのよ。神様がわたしの夫」

かあさんに自分を哀れむ気持ちなんて、これっぽっちもなかった。「自分の過去に学べば、その過去のおかげで成長できる。だけど、過去を嘆きはしない。人生には苦しいことがいっぱいあるけど、その苦しみで自分を研ぎすませばいい。いつまでもこだわったり、恨んだりしたらダメなの」とよく言っていた

学校も仕事も礼拝もないときは、まだ行ったことのない場所へ出かけた。「私があんたを選んで、この世界に連れてきた。だから、私にできなかったことは全部させてあげる」というのが、かあさんの方針だった

食べるもの、つまり食べていけることが、僕たちの暮らしのバロメーターだった。かあさんはいつも、「あんたの身体と魂と知性にちゃんと栄養を与えるのが私の仕事」と言っていた

あるとき、アディダスのスニーカーをねだると、かあさんはアビダスという偽ブランドを買ってきた。「かあさん、これ偽物だよ」「どこが違うって言うの」「見てよ、このロゴ。3本線じゃなくて4本ある」「ラッキーじゃない。1本おまけされたのね」

よく、夢を追いかけろと言うけど、思い描けないことを夢見ることはできないし、どこで生まれ育ったかによって、思い描けることがかなり限られてしまうことだってある

本当に可能なことは、自分の目の前の世界のはるか向こうにある。かあさんは、なにが可能かを示してくれた

「魚を与えれば1日で食べてしまうけど、釣りを教えれば一生食べていける」とはよく言われる。だけど「釣り竿も与えたらいいんじゃないか」とまで言う人はいない。このたとえ話には、そこが欠けているのだ。アンドリューといっしょに作業したことで、僕は初めて気づいた。恵まれた世界の人から教わる必要があるのだ

逆境と、それに堂々と立ち向かう母が、全米有数のコメディアンを作った。その事実も感動ですが、人はどこまでも前向きに生きられる。

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