『母性がもたらす幸福論』

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小林正観

約2500年前のインドに生きていたお釈迦様は、
「人物をつくる4つの要素」を弟子たちに残しました。

お釈迦様がいう「人物」というのは、
私は「世の中に寄与し、まわりからその存在を喜ばれる人」
という意味だと解釈しています。

そういった「人物」をつくる要素とは、
次の4つだとお釈迦様は言ったそうです。

1. 貧乏
2. 読書
3. 感動
4. 母親の感化

「人物」をつくる要素は「父親の感化(父性)」ではなく
「母親の感化(母性)」であると、お釈迦様は言いました。

私なりの解釈ですが、「父親」の役割は
「能率」「合理性」「生産性」といったものを
教えることなのだと思います。

けれども、お釈迦様は「人物」をつくるために
必要なのはそういった「父性」ではなく、
「他人との協調性」「共生」「他人に力を貸すこと」
「世のために自分が貢献する」ことを教える
「母性」が必要なのだと言った。

母親が子どもに与える影響は大きいと
教えてくれているのです。

アメリカの精神分析医エリック・バーン博士が提唱した
「交流分析」という心理療法がある。
正式には、Transactional Analysisといい、TAと表記される。

TAでは、大きく分けると、
人間には3つの自我状態があるとされる。

1つ目は「親(Parent)」、2つ目は「大人(Adult)」、
3つ目は「子供(Child )」だ。

1つ目の「親(Parent)」 には、父性的な性格(CP)と
母性的な性格(NP)の2つがある。

CP(父性)には、 責任感、正義感や道徳心など、
よい面があるが、それが行き過ぎると、
「〇〇すべきである」というように
支配的になってしまったり、批判的だったり、
上から目線になりやすい。

NP(母性)には、優しさ、思いやり、共感、許す、温かみ、
世話をする、などのよい面があるが、
それが行き過ぎると、「〇〇してあげる」というように、
過保護になったり、おせっかいだったり、
自立を妨(さまた)げてしまうようにもなる。

人格形成において男女を問わず、
CP(父性)が大事なことは言うまでもない。
しかしながらNP(母性)には、人を思いやるとか、
優しくするといった、「他人を喜ばせること」、
「世のため人のためにつくす」という人間としての
大切なテーマの追求が含まれている。

そして、このNP(母性)には、
「ウソを言ってはいけない」
「卑怯(ひきょうな)ことをしてはいけない」
「弱い者をいじめてはいけない」という、
武士道(会津藩の什の掟)に一脈通じるものがある。

これらのNPの価値観を子供に伝えるのが、
母親の大きな役割だともいえる。
母親の役割は偉大だ。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『新訂 いい会社をつくりましょう』

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伊那食品工業会長、塚越寛

社員が幸せに暮らせるためには、会社が雇用を維持・創出していくことが欠かせません。会社が年々、少しずつ成長することによって、新たな雇用を生み出せば、人の幸せや社会の安定につながります。

ものづくりを中心に経済成長をつげてきた日本は、現在、大きな産業の転換期にさしかかっています。戦後の復興を支えてきた二次産業が、高度な機械化やロボット化、IT化を進め、また製造拠点を海外へ移転するなどの合理化を進めてきたことによって、ものづくりの現場で以前ほど人が必要なくなってきました。
一国における就業人口の分布は、一次産業から二次産業へ、二次産業から三次産業へと移っていきます。フランスやイタリアなどで顕著なように、二次産業分野でのブランド化を進めると同時に、ホテル業や飲食業など、三次産業の育成によって、新たな雇用を生んでいくのです。観光業の発達にも、そうした背景があります。

日本でも、製造業での雇用が少なくなった分だけ、三次産業の正しい成熟による新たな雇用が求められています。
しかし現状は、三次産業での雇用創出がまだ十分ではありません。二次産業の会社が雇用を維持・創出するために、これからは「五次産業化」の取り組みがますます重要になってくると思います。五次産業とは、「二次+三次」の発想から名づけたものです。生産から消費者への販売まで、一貫して行う事業のあり方です。メーカーが五次産業をめざすには、二つの段階があります。
最初に、消費者に直接売れる商品をつくること。そして次に、自社の商品を、自分たちで消費者に売ることができるしくみをつくることです。

自社製品の研究開発による下請けからの脱出には、時間はかかりますが、長期的な視野をもって、あきらめずに取り組んでいく価値はあると思います。また、自社の商品を直接販売するしくみをつくれば、お客様の声を直接いただくことができます。
当社もかつては、販売力が弱く、作った寒天のほとんどを大手企業に納めていた下請けの時代がありました。売上高の七割を、輸出が占めていたこともありました。

会社のあるべき姿をめざして、下請けや過度の輸出依存から脱却する決断をしたからこそ、今の当社があるのです。
製造業の五次産業化には、手間と時間がかかります。初めから一人前の対応ができなくてもいいのです。日々、直接にお励ましやご助言をくださるファンのお客様とふれあうことの楽しさや喜びは、社員にやる気と誇りをもたらしています。

『会社経営の目的とは、人や社会の幸せに貢献することだというのが、私の信念です。会社の本来あるべき姿とは、社員の幸せをつうじて、いい会社をつくり、社会に貢献することだと思っています』
また、そのためには学びが必要で、学ぶ目的については、二宮尊徳先生の遺訓がある。
『翁曰く人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ学んで道を知らざれば、学ばざると同じ知って行うこと能(あた)はざれば、知らざると同じ故(ゆえ)に、人たるもの、必ず学ばざるべからず学をなすもの、必ず道を知らざるべからず道を知るもの、必ず行はざるべからず』
せっかくこの世に生を受けたにもかかわらず、学ばないということは、生まれてこなかったのと同じこと。学んだとしても、人として本来歩むべき道(魂を磨くこと)を知らなければ、学ばなかったのと同じこと。仮に知ったとしても、それを実践しなければ、知らなかったのと同じ。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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