『学びとは何か──<探究人>になるために』

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今井むつみ

・人はどのように自分の経験や人から伝えられたこと、
 教えられたことを理解し、記憶するのか
・記憶はどのような形で心の中に蓄えられ、
 どのように思い出されるのか
・子どもは(あるいは大人は)どのようなときに、
 なぜ、つまずくのか
・覚えても使えない知識と
 新しいことを生みだすことができる知識は何が違うのだろうか
・すぐに使える「生きた知識」はどのような性質を持ち、
 脳にどのような形で存在しているのだろうか

シャーロック・ホームズが普通の人よりもすぐれているのは、
多くの情報を記憶する能力というより、
犯人を見つけるためにはどのような情報が重要かを見極め、
その情報だけを見落としなく見つけ、
心に留めておける能力なのである

プロ棋士が実験で見せた驚異の記憶力とは、
棋譜の膨大なデータベースから目の前の局面を一瞬にして
見つけることのできる能力

海外の前衛的な映画を見ると、ストーリーを追えなくなって
しまうことが時々ある。
それは、行間を補うことができないことから来ている。
こういうときは、多くの場合
二つの種類のスキーマが足りない。
まず、それぞれの状況について行間を補うスキーマ。
自分たちの文化で当たり前だと思っていることが
映画の舞台となっている文化では通じない

子どもは、知らないことばと一緒に、
知らないモノを見せられると、
色や大きさ、模様などではなく「形」に注目する。
つまり、形が似ているモノに対して、
そのことばを一般化する「形ルール」を持っており、
それを使って、
初めて聞くことばの意味の範囲を決めている

語彙は膨大な数の単語からなるシステムなのである。
システムとしての語彙を身につけるためには、
単語単体の意味を学ぶだけでは不十分である。
単語同士の関係を学び、システムをつくっていく必要がある。
その中で、似ている単語同士がどう違っていて、
その二つの単語の境界がどこに引けるかを知ることは
とくに大事である

スキーマが誤ったものであると、何が起こるか。
問題解決に必要な情報に目が行かず、
関係ない情報にばかり注目してしまう

人が科学や外国語を学び、熟達していく上で大事なことは、
誤ったスキーマをつくらないことではなく、
誤った知識を修正し、
それとともにスキーマを修正していくことだ

誰もが本番では集中して必死になる。
しかし、練習でどれだけ必死になれるだろうか。
エリクソンによればアマチュアレベルの人と
達成度の高い熟達者との間の著しい違いは、練習中の集中度だ

的確な目標を持てるということは、
・その分野の超一流の人のパフォーマンスが
 どのようなものなのかを理解できる
・いまの自分がどのくらいのレベルにあって、
 超一流の人たちとどのくらい隔たりがあるかわかる
・その隔たりを埋めるために何をしたらよいのかが
 具体的にイメージできる

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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