『神道感謝のこころ』

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医師、元春日大社宮司、葉室頼昭

生命というのは、個体の生命だけを指すのではありません。生物はそれぞれ、その種の生命を伝えることによって、個々の生命が伝わるという仕組みになっているからです。
人間なら、個人の生命だけでなく、国としての生命、民族の生命、企業の生命、そしてそれぞれの家の生命を伝えることによって、個々の命が伝わるというふうにできているのです。ですから、国や民族が持っている特有の伝統文化を伝えなくなると、その国は滅亡し、個人の生命もまた滅んでいくことになります。

しかし、戦争に負けてからの日本は、日本人として誇りを持つべき過去の歴史や伝統文化をすべて否定し、子供たちに伝えなくなってしまいました。これは大変なことです。
このために戦後生まれの人たちは、過去のことはすべて自分には関係ない古いことだと考え、日本の国に誇りを持たないようになってしまったのです。日本の歴史や文化を知らないために、アメリカや西欧が正しく、また優れていると考え、日本人は外国人よりも劣っていると思い込んでいる人が多いのです。

しかしこれは、日本人の生活やものの考え方が外国人とは異なっているだけのことであって、その異なっていることの中に、他国の人たちには見られない素晴らしい宇宙観、自然観そして優れた情緒が息づいているのです。そのひとつとして特に申し上げたいのが、日本人は、人間は自分で生きているのではなく、すべて神さまの恵みと祖先の恩によって生かされているという感謝の生活を送ってきたということです。

これは、人間の生きる素晴らしい真実の道です。この世の中にはいろいろな悩みや苦しみ、病気などがありますが、それらすべては、生かされているという感謝の気持ちを忘れ、自分で生きているという「我」の心が原因で現れてきます。いろいろな悩みが現れるのは、神さまからいただいた清浄で健康な素晴らしい姿を覆って包んでしまう罪(包み)や、私たちを生かしてくださる神さまの尊い気を枯らしてしまうような穢(けが)れ(気枯れ)が身についたためだということを、昔の日本人は直感で知っていました。
ですから、これらの罪穢れを祓(はら)い除けば、もとの健康で幸せな姿が現れるとして、古来より祓いということを行ってきたのです。

これは、世界に誇るべきことであると私は思います。今の医学では、病気は存在するものであり、それを撲滅するのが治療だと思われています。しかし私は、この日本人の「罪穢れを祓えばもとの健康が現れる」という考え方のほうが真実の医学ではないかと思うのです。

その他にも、素晴らしい特質を挙げていくときりがありません。日本人は古来より素晴らしい真実の生活を続けてきた世界でも珍しい民族でありますから、これらをひとりでも多くの人が自覚し、日本人の誇りをもって、胸を張って生きてほしいと願っているのです。

神道には年に2度、大祓(おおはらえ)という神事があります。ひとつは6月30日に行われる「夏越大祓(なごしのおおはらえ)」。もうひとつが12月31日に行われる「師走大祓(しわすのおおはらえ)」。夏越大祓は、1月から6月までの半年間の罪穢れを祓い清め、茅(ち)の輪という茅(かや)で作った大きな輪をくぐり、無病息災を祈る。師走大祓は、7月から12月までの半年間でたまった罪穢れを祓い清め、新年に向かって新たな気持ちで出発する。つまり、半年間にたまってしまった罪や穢れを一度リセットして、新たに1から出直すという、素晴らしいシステムです。どんな失敗をしてもそれを無かったことにして、新たに再出発するという、

起業家精神にも通じる、何度倒れても起き上がるという考え方。体に汚れや臭いがついたので、それを香水でごまかすというのではなく、風呂やシャワーを浴びて体を清める、というのが祓い清めるということ。掃除も同じで、たまってしまった不要なものをどんどん捨て、神社の境内のように、清々(すがすが)しく、すっきりとさせることが、祓い清めること。
また、健康において祓い清めるということは、体にたまった毒素や重金属などを排出することにより、本来の健康が戻り、元々持っていた自分の自己治癒力や免疫力が高まるともいわれている。

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