THE ONE THING

Pocket

ゲアリー・ケラー

クリスマスをはじめ、
人々に幸せをもたらすあらゆるものを嫌悪している、
無慈悲で、しみったれで、どん欲で、
守銭奴の代名詞のようにいわれる男スクルージ。
チャールズ・ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』の
主人公、エベニーザ・スクルージだ。

あるクリスマスイヴのこと、スクルージのもとに
かつての共同経営者ジェイコヴ・マーレイの亡霊が現れる。
マーレイは嘆き悲しんで言う。

「私が今夜ここに来たのは君に警告するためだ。
君にはまだ私のような運命を免れるチャンスも希望もある。
いずれ3人の精霊が君のもとに現れるだろう」

やがて精霊たちがやってきて、
スクルージの過去、現在、未来を見せる。
それはぞっとするような経験で、
翌朝目覚めても、彼の動揺はおさまらなかった。
めまいを感じながらも、
彼はまだ運命を変えるだけの時間があることに気づく。

通りに飛び出すと最初に出会った少年に、
市場で一番大きな七面鳥を買って、
彼のたった一人の使用人ボブ・クラチットの家に
名前を伏せて届けるように頼む。

また、以前貧しい人のための施しを懇願されて
はねつけた紳士に会うと、
すぐに許しを乞い、多額の寄付を約束する。

最後に甥の家に行き、
長いあいだ自分が愚か者だったことを詫び、
祝祭の晩餐の招待を受け入れる。
甥と妻と客たちは、彼が心から喜んでいる様子にひどく驚く。

翌朝、クラチットが遅刻して出勤してくると、
スクルージが待ちかまえていて、いつものように怒鳴る。
「こんな時間に来るなんて、どういうつもりだ?
もう我慢ならない!」
しかしスクルージの次の一言を聞いて、
クラチットは耳を疑う。
「だから、君の給料を上げようと思う!」
その後もずっと、スクルージはクラチット一家の力になる。

クラチットの末息子で病弱なティムのために医者を見つけ、
ティムの第二の父ともいえる存在になる。
彼は残りの人生を他人につくすことに
時間とお金を費やしながら生きていく。

マーレイの亡霊が現れたあとスクルージはどうなったか?
彼の目的は変わり、それが最優先事項を変え、
その結果、生産力を向ける対象が変わった。

マーレイのおかげで、スクルージは
新たな目的の力、変化を引き起こす力を
身をもって知ったのだ。

物語が終わるころには、スクルージの目的は
もはやお金ではなく、人間になっている。
人との交わりに幸せを感じ、
なんとか救いの手を伸ばそうとする。

お金をため込むことより人を助けることに価値を見出し、
お金は人のために役立ててこそ、のものだと考える。

どんな人間か、どこへ行こうとしているのかによって、
その人が何をし、何をなしとげるかが決まる。
目的を持って生きる人生は、
どんな人生よりも力強く幸せである。

人の生き方にとって、もっとも大事なことは、その方向性だ。
どちらを目指して進んで行くかによって、
人は全く違った道を歩んでしまう。
己の欲のために生きるのか、人の喜びのために生きるのか。

意欲が強ければ強いほど、間違った方向性を目指すなら、
その崩壊のスピードは早まる。

我々はいったい、どこを目指しているのか、
どんな人生を歩もうとしているのか。
人の喜びのために生きている人は幸せだ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

Pocket