『なんとなく、始めよう』

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中谷彰宏

世の中で偉人と呼ばれる人は、
本来、別になりたかった仕事がある人です。
習いごとも、なんとなく始めた人のほうが続きます。
最初から期待感がないからです。

アイドルの「たまたま友達の付き添いで
オーディションに行ったら、
友達が落ちて、私が通った」という話は、実話です。
マネージャーのつくり話ではありません。
必死でないほうが通るのです。

新しいホテルができた時は、どんなホテルか誰もわかりません。
創業時の立ち上げの時に入った人たちは、一生懸命です。
5年ぐらいたった時に、そのホテルはトップになりました。

求人に応募者殺到です。
人数は大体そろっているので、採用数は若干名です。
何百倍もの競争率になりました。
それを勝ち上がってきたのですから、
本来はすごいモチベーションです。
それが「ちょっと思っていたのと違う」と言って辞めるのです。

これは最初に期待値が上がりすぎていることが原因です。
「思っていた仕事ではなかった」と言って辞める人は、
第一志望の会社に入れた人なのです。
その人は、テレビのドラマを思い浮かべていたのです。

僕はホテルの研修の仕事をしています。
ホテルのドラマは定期的に放送されています。
ホテルのドラマがオンエアされたあとは、
ホテル志望者が増えます。
同時に、1年目の離職率が高くなります。
第2新卒が増えるのです。
ドラマと混同して来るからです。

実際は、ドラマでは描かれないような
裏の大変なことがたくさんあります。

《第一志望でないほうが、続く。》

昔の結婚のプロポーズの言葉は、
「私と一緒に苦労してくれないか?」というものが多かった。
つまり、苦労するのが前提となっている。

しかし、昨今は、「君をもっと幸せにするから」が多い。
それは、今が幸せだけれど、もっと幸せになろうということ。

期待値が上がれば上がるほど、
それと違ったときの落胆の度合いは大きい。
結婚に限らず、何かを始めるときの期待値が
低ければ低いほど、物事は長く続く。

「苦労するのがあたりまえ」であり、
「うまくいかなくてあたりまえ」なのだから、
何かトラブルや困難が起こってもあまりうろたえない。

期待値を上げずに…
「なんとなく、始めよう」

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか

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プチ・レトル 122180 blog

アマゾンは物流システムを重要視する中で、
最高の人材をそこに配置するようにしています。
倉庫管理者の多くは、MBAを取っている人間です。
新卒採用された東大卒の若手さえも、
倉庫でピッキングをするところから仕事を始めます

一般的な日本企業では、物流部門の社員に
そんな高い給料は払えない、という話になりますが、
それは物流に対する
経営層のコミットメントの違いによるのです

倉庫管理に優秀な人材をあて、ハイテクを駆使し、
徹底したマージンコントロールを行う。
このようにして、倉庫の効率を飛躍的に上げることで、
その利益を「安さ」という形で消費者に還元していくのです。
どこよりも安い品揃えに、自然と購買数が増える。
それによってさらなる設備投資が可能になる。
アマゾンは、このような無敵のサイクルを作り上げたのです

アマゾンは本を仕入れる際に、
各取次会社に様々な条件を提示して互いを競争させ、
最も条件の良い業者から順位付けをします。
そして、順位が上の会社から
優先的に購買リストを渡すのです。
たとえば、順位トップの会社がそのうち50%を納品すると、
次に2番目の会社に残りの購買リストが回ってきて、
そこが30%納品し、残りの20%が3番目の会社に流れる
といった仕組みです。
この仕組みを「カスケード」と呼びます

アマゾンの2016年12月期の売上高に対する
物流コストの比率は、13%

EDIを導入すると、受注、発注、出荷、請求、支払
といった取引データを、異なる企業間で
電子的にやり取りすることができます。
実は、他の会社とのこうしたシステム連携を
地道に行っているからこそ、
アマゾンではスムーズで迅速な配送が可能になるのです

アマゾンでは、一部大手製造業と同様に、
顧客からの注文が入った場合、
その注文を納品(フルフィル)するために考えられ得る
全ての納品経路(仕入先→倉庫→顧客)を算出し、
お届け日(納期)とコストを考慮したうえで、
最適な納品経路(フルフィルメントパス)を
決定するシステムを実装しています

アマゾンでは、最初からフリーロケーションを前提に
倉庫を作ります。
無数の商品を扱っており、
大抵は小ロットで注文されるため、
圧倒的にフリーロケーションのほうが向いているからです

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾

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『欲望する「ことば」』

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嶋浩一郎、松井剛
博報堂ケトル共同CEOの嶋浩一郎
一橋大学教授でマーケティング、消費者行動論、
文化社会学などを専門とする松井剛

言葉がわれわれの欲望を変え、現実を変えていく

突然ですが、質問です。
あなたは「加齢臭」を気にしたことがありますか? 
女性の方であれば、「女子力」を気にしたことはありますか? 

ある、という人に重ねて聞きます。
では、「加齢臭」あるいは「女子力」という
ことばができる前に、
それらについて気にしたことがあったでしょうか?

そうなのです。

われわれは、自分の欲望は自分の中にある、と
思ってしまいがちで
すが、じつは欲望は言葉によって作られるのです。
博報堂PR局は、これを「社会記号」と名付けた。

「ロハス」「第三のビール」といったことばは、
世の中の新しい動きや事象を説明するために
メディアがつくった社会記号ですが、
ロハスということばができたことによって
エココンシャスな商品が売れ、
第三のビールということばができたことで、
ビール各社の「新ジャンル」がヒットするという
現象が起こりました(嶋浩一郎)

「おひとりさま」という社会記号が定着するということは、
「他人に気を遣うより、自分が好きなように
外食や旅行をしたっていいじゃない」という欲望が
世の中に芽生えているということ(嶋浩一郎)

最初に取り上げるのは、「ハリトシス(halitosis)」
ということばです。耳慣れないことばですね。
これは「口臭」を意味する医学用語です。
このことばがよく知られるようになったのは、
1920年代のアメリカにおいて展開された
リステリンの広告がきっかけだと言われています
この広告キャンペーンは大成功を収め、
1920~21年は10万ドル程度だったランバート薬品の利益は、
1927年には400万ドルにまで達しました。
リステリンで口をゆすぐことが、
シャワーやひげそりと同様に、
朝の習慣としてアメリカ人に定着したのです(松井剛)

堅い専門用語を使った“病名”を付けることで、
この“病気”を治さなければ社会的な失敗をもたらすかもしれない
という固定観念を植え付けることができる場合がある(松井剛)

〇社会記号の8つの機能(松井剛)
自己確認 「コギャルでよかった」
同化 「コギャルになりたい」
寛容 「コギャルだからしょうがない」
拒絶 「コギャルなんて大嫌い」
規範 「コギャルなら茶髪・ルーズソックスでしょ」
課題 「コギャルのような不良は更生させるべき」
報道 「コギャルの生態を知らせたい」
市場 「コギャル向けの商品をつくろう」

新しいモノやサービスを売るためには、前提として、
まずカテゴリーを消費者や流通業者などに
認知させる必要があるわけです。
そのため、カテゴリーの社会記号は、
マーケティングの研究者から注目されてきました(松井剛)

カテゴリーとしての社会記号をつくる際に大事なポイントは、
代表例を消費者に認知させることになるのでしょう。
例えば「エナジードリンク」ならばレッドブル、
「サードウェーブコーヒー」ならばブルーボトルコーヒー、
「渋谷系」ならば小沢健二、といった具合です(松井剛)

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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寺山修司とポスター貼りと。

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笹目浩之

19歳の時、寺山修司が主宰するアングラ劇団の芝居を見て、
すっかり演劇の虜になり、以来、ポスター貼りを生業にして、
起業、演劇公演プロデュースまで手掛けてしまったという
著者による、興味深い半自伝的エッセイ。

「好きなことを仕事にしたい」という人は
世の中に数多くいると思いますが、
具体的にどうやったらいいか、
わからないで迷っている方が大半だと思います。

「ポスター貼りからでも好きな世界に関わることはできる」
ということと、好きなこと「だけ」を仕事にするには、
金銭的な誘惑を断ち切り、
好きなことだけやり続けられる
仕組みづくりをすることが大事だ。

周囲を見ている限り、
好きなことを仕事にすることはできても、
それが継続できていない人は多い。

自分サイズの起業を目指す人は、著者の考え方を学ぶことで、
無駄な誘惑、失敗を避けられる。

ポスターを貼りに行くという行為が、
街のいたるところや人々の生活の中にまで演劇や芸術的なものを広げるという、
どこか寺山さんの演劇論に近い行為だという勝手な認識もあった

それまでさまざまな仕事をしてきたが、
どれもぼくでなくてもできる仕事だったし、
代わりの人間はいくらでもいた。
その上、手に職があるわけでもなく稼ぐ手段を持たないし、
食えもしなかったのだ。
そんな精神的・肉体的にも
どん底のような暮らしがあったから、
ポスター貼りの仕事によってできた人と人との結びつきが、
ひとしお嬉しかった

人がやりたがらない仕事を引き受け、
時にバカにされながらも最底辺から演劇を見つづけ、
足で情報を集めてきたことで、
ある日それがプラスに転じることがある

一番いい場所にポスターを貼るのが目標だった

〇ポスター貼りの「三か条」
一、酒の席では絶対に仕事の話をしない。
二、ポスターの制作までは引き受けない。
  あくまでも貼るだけに徹する。
三、小劇団の人とは知り合いにならない。

手を広げれば売上は上がるというが、
それに対する経費やリスクが多くなれば、
安心して仕事に没頭することもできない。
いくら稼げるかよりも、
仕事をしていくら残せるかが大事だと思ったのだ

「どんなに小規模の公演でも、
スタッフとキャスト合わせれば10人くらいいるでしょう。
その人たちで10枚ずつポスターを持って街に貼りに出れば、
1時間で貼れますよ。
ウチに数万円払って依頼するくらいなら、
その分のお金を稽古や芝居の足しにしてください」
小劇団の関係者からポスター貼りの問い合わせを受けた時に、
ぼくは実際にこう言って断っていた

実は会社設立当時の若い頃に、
「壁の買い切り」を本気で考えたこともある。
でも、やめました。考えているうちに、違うなと思った。
壁を買い切ったならば、そのスペースを埋めるために
営業活動をしなければならない

自分を騙してまで世間の価値観に合わせようとしていたら、
いつになっても人に頼ったり甘えるだけだ

競合する相手がいないから、相場もなければ値引き合戦もない

「好きなことを仕事にする」といった場合、
好きなことが仕事になっていないか、
カタログから「探す」人が多いのですが、
それでは好きなことを、好きなやり方でやることはできません。

昔、カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田さんが、
5W1Hの頭に「好きな」を付ければ理想の仕事になる、
とおっしゃっていましたが、
まさにそのためには「仕組みづくり」が重要です。

「好き」を仕事にするための考え方と仕組みづくり。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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