できる米国人の「仕事の習慣」

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カリフォルニア州に本拠をおく広告代理店のCEO・岩瀬昌美

〇米国のビジネスパーソンには、
ワークライフ・バランスはない!?

「米国は、ワークライフ・バランスの元祖。
日本も見習うべき」だと思っていたら、大間違い。
米国の多くのビジネスパーソン(特に若手)には、
ワークライフ・バランスという考えはない。

「米国の若いビジネスパーソンには、
経営学修士(MBA)取得のため
夜間大学へ通っている人が多いです。
昼間は会社で働き、夜は勉強に打ち込む。
すべての時間を仕事や勉強にあてているのです」

それでもプライベートな時間は確保し、
思い切り趣味を楽しんでいるのではと思うが、
そういう人も実は少数派とか。

「できる米国人と、オフの趣味について語り合ったことは、
一度もありません。
彼らにとって、ライフとワークは
分けられるものではないのです。
仕事が楽しければ、それでいい。
『仕事とは別に趣味をもたなきゃダメ』なんて
発想が存在しません。
つまり、ワークライフ・インテグレーションが、
できる米国人の働き方です」

〇米国はテレワーク先進国ではなかった

日本では総務省が推進し、大手企業を中心に
導入が進められているテレワーク。
モバイル・IT機器を活用して、
在宅あるいは外出先での仕事を容易にするもので、
米国がテレワーク先進国かと思っていたら…

「私はかつて、全米最大の通信会社AT&Tに勤めていましたが、
在宅勤務の制度はすでに20年前からありました。
ところが、ほとんどの人がやっていないのです。
最初のうちは試しても、かなり多くの人がやめていました。
その理由として第一に挙げられるのが、子供です。
小さな子供がいると、騒いだりいたずらしてきたりで
仕事に集中できません。
結局、オフィスで仕事をしたほうがはかどるので、
在宅勤務の意義が乏しいのです」

ただし、米国の企業社会では、
子供が急病や学校の行事などの都合で、
オフィスを出ることに寛容だ。
これは、私用外出がしにくい風土の日本企業が、
積極的に学ぶべき点だろう。

〇米国のビジネスパーソンは個人主義でもなかった

「日本人は和の精神で協調しながら仕事を進める。
対して米国人は個人主義的で愛社精神に乏しい」といった
相違が日米間にあると、漠然と信じられている。が、
「まったく逆では」と思えるシーンの方が多かった。

「できるアメリカ人の上司は、
部下の面倒を本当によく見ます。
部下はその上司に対して、強い忠誠心をもっています。
組織自体への忠誠心は日本人ほどではないかもしれませんが、
上司・部下の関係は、まるで日本の戦国時代の
武将と配下の兵の関係を見るようです」

〇転職を繰り返せばキャリアダウンするのは米国でも同じ

ひと昔前ほどではないといえ、日本では転職を何度かする
キャリア構築は一般的でなく、まだまだ雇用の流動性は低い。
そこが、米国の企業社会との大きな違いだと
思っている人は多い。
しかし、実は数度の転職によって
キャリアアップをはかる人は、米国でも稀だ。

「たしかに2~3年おきに転職する人は存在します。
しかし、彼らは嫌になったら
すぐ離婚するようなタイプの人たち。
こういう人はキャリアアップどころか、
転職のたびにキャリアダウンしていきます」

「米国でも40代に入ると、就職は至難の技です。
履歴書に年齢を書かなくてよいですが、
年齢差別は厳然としてあります」

日本人がよく引き合いに出す、
転職するたびにキャリアアップするタイプは、
ヘッドハントされるような超エリートくらいなものだ。

「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもので、
日本人から羨望のまなざしで見られる米国の企業社会も、
実情はそう甘いものではなさそうだ。
「日本のほうがチャンスの国」だと指摘しているくらいである。
ちなみに、「ブラック企業」は米国にも存在するそうで、
理不尽な過重労働を強いるような企業は、
さっさと見切りをつけるべきだ。

しかし、多くのエリートアメリカ人が、
お給料の安い方向への転職をするのは、
ワークライフバランスのためであることが多い。

例えば、NYCやLAやSFの弁護士の友達の話では、
弁護士の理想的なコースは、
新卒で大手のお給料の良いローファームに入って、
その間に学生ローンを返済したり貯金したりして、
シニアになる前に企業弁護士や、ロースクールの教授などの
ポジションに移り、
家族や趣味の時間を取れるようにするのがいいと
思っている人が多いようです。

こういうコースをたどるために頑張って
何年も転職活動している人が周りにたくさんいます。

これは、お給料は半減だけど、9時5時の仕事になって、
週末出勤もなく、
家族の時間と趣味の時間が増えて
ハッピーと考えられてると思います。

お給料が下がる転職をする人たちは、
「嫌になったらすぐ離婚するようなタイプの人たち」と
とは限りません。
むしろ、アメリカではこの人たちこそ
ワークライフバランスを考えて、キャリアアップを捨てるが
家族や趣味を大切にしている人たちと、
周囲から思われている。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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