『手ぶらで生きる。』

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ミニマリストしぶ

月の生活費は7万円。テーブル、収納、冷蔵庫は持たない。財布も持たない。床に寝る。服と靴は毎日同じ。食べるのは1日1食…。
著者は現在、福岡で4畳半、家賃2万円の部屋に暮らしていますが、それでも豊かに過ごせていると言います。その理由は以下の通りです。

狭い部屋に住める人は、安い家賃で済むから、好きな場所に住むことができる。部屋の掃除も簡単だ。そして何より、浮いたお金で時間と生活にゆとりが生まれる
ミニマリストの思想の本質は、本当に大切な1%のために、99%をそぎ落とすことにある。

我々はつい受け身で物を選び、常識を疑いもせずに平均よりちょっと良い暮らしを望みますが、本当に大切な1%に集中すれば、生活は驚くほどシンプルに、かつ豊かになります。多様な価値観が受け入れられる世の中になり、「見栄」の重要度が減った今、ミニマリストの考え方は、もっと多くの人に受け入れられていい。

僕が今の部屋を選ぶ決め手となったのが、出窓の存在だ。食事の際は皿を置き、読書やネットをするときには腰をかける
持ち歩いて使うパソコンは「リュック」、薬類は「クラッチバッグ」、シェーバーや歯ブラシなどの水まわりの物は「トラベルポーチ」に入れて収納している。これらの収納用品に共通するのは、すべてが「収納以外の使い道がある」ということ。いずれも「収納」と「持ち運び」の両方を兼ね備えている

まずは、「本当に必要か」を吟味して買うこと。そして、買うときには「不用になれば売れる」物を選び、必要がないとわかった時点で早く売り抜けること

「ちょっと好き」ではなく「大大大好き」と思えるレベルの「好き」を大事にする

【消費活動=お金を払って「与えられる」側になること】
【生産活動=自分で生み出して「与える」側になること】

時間を生み出すツールに投資する
ミニマルな空間が「没頭」を生み出し、一点突破で結果を出せる

貧乏人の部屋には物が多い。ドラマの美術さんは、貧乏人の部屋には物を増やし、壁に隙間無くちぐはぐなタンスを並べたりして、「貧困」を表現するそうだ。逆に、豪邸のセットでは物を減らし、なにも置いていない面を増やして「余裕」を表現する

毎日長時間使う物にお金を多く使ったほうが幸福度が高い(=コンフォート原則)
自分が必要とするものを考え、そのニーズを満たすと思った最初のものを選択すること
生活コストを抑えて、稼ぐべき金額を下げる60万円以上は貯金しない。60万円の根拠は、「必要最小限かかる生活費の1年分」である

人にプレゼントをあげるとき、基本的に消耗品しか贈らない
物は少なく、「心の拠り所」は多く

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『アウトプットは錬金術』

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成毛眞元日本マイクロソフト代表取締役社長
現在書評サイト「HONZ」を手掛ける

よくセミナーで「こっち側」と「あっち側」という言い方をしますが、情報を発信する側と受ける側では、圧倒的に情報量が違う。それは、情報発信する人には自ずと情報が集まるからです。先生が生徒より優れているのは、そこに「情報の非対称性」があるからです。そして、社会人がこの「情報の非対称性」を生むのに手っ取り早い手段が、情報発信する、つまり「アウトプットする」ことなのです。

今の時代、情報収集、勉強をして、知識、教養を溜め込んで満足しているようでは、もうダメだ。得た情報をどう発信して、自分の血肉とするのか、価値あるものに変えていくのか、もっとわかりやすく言えば、「お金」に変えるのかを意識せよ

AIに代替されない仕事は、編集後にアウトプットをする仕事
アウトプットしないと、アウトプットは上達しないのだ。さらに、アウトプットしないと、アウトプットの才能の発見が遅れてしまう
それまでは別のものとされていた話し言葉と書き言葉を隔てる垣根がぐっと下がったのは圓朝と四迷、この二人の天才がいたからだ。これからももしかすると、文章と、今は文章とは違うと思われているものが、どこかにいる天才によって融合される日がくるかもしれない

社会人が書くべき文章、また、求められる文章とはどのようなものかというと、ズバリ、紹介文だ800字と思うな、100字×8だと思え

第1ブロック:その本の印象の紹介。100文字で、この文章を読む人に、どう思ってほしいかを伝える
第2ブロック:その本の読者の想定
第3ブロック:その本の中身の紹介1。100文字で、その本の面白さはどこにあるのか、その全体感を伝える
第4ブロック:その本の中身の紹介2。別の側面をピックアップできると良い
第5ブロック:その本の具体的な中身の紹介1。つまり引用だ
第6ブロック:この本の具体的な中身の紹介2。ここも引用だ
第7ブロック:この本の著者の具体的な紹介。第2ブロックあたりで著者については紹介済みのはずだが、文章を紹介した後なので、それを書いたのはどんな人? という関心を持った読者へのサービス精神をここで発揮する
第8ブロック:なぜこの本を取りあげたのかだめ押しをする

リズムのお手本としておすすめなのが都々逸調だ。都々逸とは「三千世界の鴉を殺し ぬしと添い寝がしてみたい」のような七七七五調の定型詩だ

単に「古い家、買いませんか」ではなく、「レアで二つとない年季の入った建材買いませんか」という提案をするのだ。これが、他人がスルーしている現象をマネタイズしながらアウトプットする唯一の方法だ実際には、みんながアウトプットするようになると需要と供給の関係で書き手の収入は下がるはずですが、それでも優位な立ち位置が取れれば、まだまだ可能性はあると思います。

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ゴルフ場経営も厳しい

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競技人口が減り、高齢化も深刻な問題。客足が遠のき、業績が頭打ちになっている。ゴルフ場倒産の一般的なパターンは、ゴルフ会員権の仕組みにある。

会員権として、預託金を集めるのだが、その償還する期限が必ずやって来る。預託金の償還に耐えきれずに倒産するリスクは大きい。建設ラッシュから10~20年が経過した2002年に、ゴルフ場倒産はピークに達した。1年で100件超の倒産が発生した。

こうした側面から、金融機関が整理回収機構による不良債権処理を勧め出した。再建型の法的整理に至ったゴルフ場を、当時に積極的に買収していたのがGSとローンスターだ。

GSは、ゴールドマン・サックスで系列会社のゴルフアライアンス・ジャパンが買収に当たっていた。この会社は、2003年にアコーディア・ゴルフに改称した。保有コース約40、契約コース約90。

ローンスターは、地産グループのゴルフ事業を買収し、PGMグループとなり、ゴルフ場を買収してきた。パチンコメーカー・平和の傘下で約140コースを保有している。

こうした大手資本の後ろ盾を得たゴルフ場は、再倒産のリスクは少ないと思われるが、そうでもない。法的整理を選んだゴルフ場の多くは、預託金の償還期限を15年延長するなどの措置が再建計画に織り込まれているからだ。問題は解決しておらず、先延ばしされただけだ。

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ソクラテスは、ポピュリズムに殺された

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ソクラテスの裁判は、戦争中に行われるが、独裁者による秘密裁判で処刑されたのではない。訴えたのは市民であり、刑を言い渡したのも市民である。

市民がソクラテスに向けた批難は、「お前は、なんか怪しい。嫌な事を言う。皆の空気に水を差す。だから、死ね。」というもの。犯罪の具体例は無く、噂による感情の暴走だけだ。それは、現代のSNSで頻発するリンチを全く変わりない。

対するソクラテスの法廷弁論は、実に論理的だ。ソクラテスは、論理という手段では勝てないことを承知しており、そのことも、はっきり語っていた。彼は、人々が論理を選ばないことを、よく知っていた。しかし、それでも彼は論理を選び、死刑を受け入れたのだ。

もっとも心を打つのは、そこだった。今でも、人間は論理的ではない。話し合えば正義が実現する訳ではない。すべての政治と哲学は、この前提から始まらなくてはいけない。

魔女狩りも、ポビュリズムというか、集団ヒステリーですな。

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『心を満たす』

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マツダミヒロ

あなたは、どんな時にイライラしていますか?それは、自分が満たされていない時ですね。心にいっぱいの幸せを感じていたら、怒ることも少なくなるはずです。満たされることで、心が安定するからです。反対に、心が安定していないと、相手を攻撃するような言葉を発してしまいます。「なんでやらないの?」「なんで言うことが聞けないの?」「なんでわかってくれないの?」一見、質問の形に見えますが、これは怒りをぶつけて理由を聞き出す「尋問」なのです。心が満たされていないと、自分に対しても尋問してしまいます。「なんで私はダメなんだろう?」と尋問しても、言い訳を探すことになります。自分を否定する要素を探して、自らを傷つけます。すると、悲しい気持ちになって、エネルギーをロスしてしまいます。つまり、心のグラスの中身が減ってしまうのですね。

まず、最初に、私が魔法の質問でお伝えしている「シャンパンタワーの法則」について説明したいと思います。グラスをプラミッド上に積み上げ、シャンパンを注ぐセレモニー「シャンパンタワー」をご存じでしょうか。
● 一番上のグラスを自分
● 2段目のグラスを家族
● 3段目のグラスを仕事のスタッフや友達
● 4段目のグラスをお客様
● 5段目のグラスを社会や地域の人々と見立てます。
そう思った時に、あなたは、どの段のグラスから、シャンパンという名の、愛とエネルギーを注いでいるでしょうか。家族のため、スタッフのため、お客様のためにと、愛とエネルギーを注いでいる人は多いことでしょう。
でも、すべてのグラスにシャンパンを注ごうと思ったら?そう、一番上、つまり、まずは、自分自身に注ぐことが大事なのです。自分に注いであふれたエネルギーが、次の段へとあふれていくことこそが、美しくエネルギーが行きわたる形なのです。自分のグラスを満たすことで、周りにもエネルギーを与えることができるのです。

自分が満たされていれば、人に優しくできます。余裕を持って接することができるし、課題の解決にも地に足をつけて取り組めます。まず、自分の心を満たすことは、すべてにおいて大事なことなのです。心を満たす方法は2つあります。『「人に満たしてもらう方法」と「自分で満たす方法」だ。多くは誰かに満たしてもらおうと思ってしまうが、それでは「誰かに何かをしてもらえないと、自分の心は満たされない」という依存の状態になりやすい。
自分で自分の心のグラスを満たす方法を持っていれば、依存体質にならずにすむ。たとえば、緑を見ると落ち着くから、10分間だけでも公園を散歩する。コーヒーが大好きだから、朝の5分だけでも、おいしいコーヒーを味わう時間をつくる。そんなふうに、自分の行動によって自分の心を満たすことを行ってみよう』

■安岡正篤師「六中観(ろくちゅうかん)」
【意中有人(いちゅうひとあり)】 心の中に尊敬する師を持ち、誰かに推薦できる人があること。
【腹中有書(ふくちゅうしょあり)】 自分の哲学や座右の銘、愛読書を持っていること。
【壺中有天(こちゅうてんあり)】 狭い壺の中に広々とした天(空)があるという意味で、何か事あった時には「誰にも邪魔されない心休まる自分の別世界を持つことが必要だ」と言うこと。

尊敬する師や、自分の愛読書、哲学、座右の銘などがあれば、心はいつも満たされる。そして、 壺中有天という別世界を持つ人は、どんなに困難なことがあろうとも、自らにエネルギーを充填できる。「 シャンパンタワー」の構造を忘れずにまず、自分自身のシャンパングラスを愛で満たそう。

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『リーダーの脳科学』

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黒川伊保子

リーダーの条件とは、周囲を笑顔にする力。つきつめると、案外、それしかないかもしれない。

かつて、写真家の白川由紀さんが、そんなことを私に教えてくれた。アフリカ大陸を単身歩き、見たこともないような鮮やかな色の空や大地を撮り続けていた白川さんは、そこでたくさんの集落を訪れた。東洋人の若い女の子は珍しいらしく、どの集落でも親切にされ、晩餐に招待されたという。ある集落では若いリーダーが、別の集落では長老のリーダーが彼女を迎えてくれた。華美な装飾を身に付けたリーダーもいれば、誰よりも質素な服装のリーダーもいた。豊かな声量の雄弁なリーダーもいれば、寡黙なリーダーもいた。
記号論的な条件で言えば、「リーダーたるもの」に類型などないかのように見えたが、実際には、紹介される前に、誰がリーダーなのか、白川さんには必ず分かったという。それはね、と、彼女は微笑んだ。「その人がその場に入ってきたとき、そこにいる全員が、嬉しそうな顔になるから」

私は、企業コンサルタントという立場上、日々、多くのリーダーに会う。率先して先頭を走るタイプもいれば、おっとりと構えて周囲に「この人をなんとかしてあげたい」と思わせるがために、部下の潜在力をじっくり引きだすタイプもいる。緻密さ、つかみのよさ、臨機応変さ、バランスの良さ、あるいは、突出した何か…リーダーのリーダーたるゆえんは、リーダーによってさまざまに違い、ふたりとして「同じタイプ」と確信するリーダーに会ったことはない。

しかし、どの“名将”にも共通なのは、周囲を嬉しそうな顔にする力の持ち主であることだ。しかも、その力は、彼の肩書きを知らない人にも及ぶのだ。一見のレストランに入っても、“名将”は必ず大切にされる。店の人の表情が、接待用の笑みから、嬉しそうな笑顔に変わるのがわかる。周囲を笑顔にする力。これは、ときに奇跡を作りだす。運がいいと言われる人に、必ず備わった力でもある。
周囲を笑顔にするのは、実は、簡単なことなのだ。自分が、嬉しい気持ちでそこにいればいいのである。あらゆることに好奇心を働かせ、そこにいることを楽しむ。ただ、それだけだ。しかしながら、きっと、「常に、そこにいることを楽しむ」こと自体が、一般には難しいのに違いない。

■「「周囲を笑顔にする力」の反対は「周囲を不機嫌にさせる力」ゲーテは、「人間の最大の罪は不機嫌である」と言った。ということは、「人間の最大の功績は周囲を笑顔にする力」だ。一人、その人が入っていくだけで、その集まりがパッと明るくなり、笑顔になる。まさに、リーダーそのものだ。

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『不機嫌は罪である』

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明治大学教授、齋藤孝

あなたは日々の生活のなかで、次のような人を見かけたことがないでしょうか。朝の通勤ラッシュ時、満員電車で少し肩を押されただけで舌打ちをしている人。ご近所同士で挨拶しようとすると、スタスタと歩いていってしまう人。スーパーマーケットで小さな子どもが泣き出しただけで、眉をひそめる人。飲食店のスタッフが少し雑談をしているだけで、クレームをつける人。電車がちょっとでも遅延すると、駅員に詰め寄って怒鳴る人。ベビーカーを見かけると、「邪魔」という感情を隠さない人。朝出社したときに、同僚に挨拶もせず、仏頂面でデスクに向かう人。会議で自分の提案がうまく通らなかったといって、つっけんどんになる人。部下が失敗したときに、周囲の目も気にせず、ヒステリックに怒鳴りつける人。
挙げていくときりがありませんね。どれも、おそらく心当たりのある光景ではないでしょうか。しかもこうした行動をとっている人には、地位も分別もありそうな方もかなりいらっしゃいます。もしかしたら、あなた自身もこれらの行動をとってしまい、後悔したこともあるかもしれません。あるいは、自分がそうした行動をとっていることに気づかずに、周囲から「あの人って不機嫌だな」と敬遠されている可能性もあります。

機嫌とは、人の表情や態度に表れる快・不快の状態です。つまり不機嫌とは、不快な気分を表情や態度に表しているさまをいう言葉です。現代を生きる人の多くがかかえているのは、行き場のない「慢性的な不機嫌」です。情報伝達の差し迫った必要性があるわけでもなく、不快であることを伝えても事態は何も解決しないのに、無意味な不機嫌を世の中に撒き散らしている人があまりにも多い。電車の中で舌打ちしたからといって、満員電車が解消されるでしょうか?インターネットで書き散らした罵倒が、社会を良くしたことがあったでしょうか?誰も「舌打ちや罵倒をしたら事態が良くなる」と思っているわけではないのに、表に不機嫌が滲み出てしまっている。現代人は四六時中誰かの不機嫌な言動にさらされ、ちょっとずつ精神を消耗しています。そして自らも、知らず知らずのうちに不機嫌に侵食されてしまっているのです。

中年から老年にかけての男性の不機嫌の問題をいち早く取り上げたのが、シェイクスピアの『リア王』でした。リア王は、愛情深い末娘が自分におべかを使わないことに激昂して彼女を追放し、甘言を弄する上の娘たちをかわいがった結果、身を破滅させて荒野をさまようことになります。老人の不機嫌が招く悲劇をこれ以上なく描いた作品です。さすがにこの本をお読みの方の中に国王はいないでしょうが、身につまされっる教訓が詰まった作品です。

プチ「リア王」にならないためにも、まずは自分の不機嫌に自覚的になってみてください。「40歳を過ぎたら、普通にしていても不機嫌そうに見える。上機嫌くらいでちょうどいい」と自覚するだけでも変化が起きます。

「いつも上機嫌」と聞いたとき、あなたはどんな印象を抱くでしょうか?お調子者で何も考えていない不用意な人なのではないかと考える人も多いかと思います。逆に「いつも不機嫌」というと、しかつめらしい顔をして難しいことを考えている、つまり「頭がいい人」と考えるのではないでしょうか。知的な人間はやたらとニコニコと愛想よくふるまわない、作家や学者というのは根暗で不機嫌なものだという風潮が根強く存在しています。
まず正しておきたい誤解が、知性と機嫌は決して結びついてはいないということです。機嫌というのは、理性や知性とは相反する分野のように思われがちですが、気分をコントロールすることは立派な知的能力の一つです。
仏頂面をしている人、他人に辛辣なことを言う人のほうが、よく物を考えているように思えるかもしれません。ところが実際は、前向きに生産性のあることを考えている人の頭やからだは柔軟に動いています。表情もやわらかですし、ポジティブな空気を発するものなのです。
不機嫌がクセになると、頭も身体も動きにくくなります。運動不足と同じで、こころの運動能力が下がってしまうんですね。気分をコントロールすることはこころの運動能力を維持し、仕事や人間関係のパフォーマンスを上げる知的技術です。

■「「人間の最大の罪は不機嫌である」ドイツの詩人、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ。人間の最大の罪とはかなり大袈裟のように感じる。しかし、笑顔やあくびが伝染するのと同じように、不機嫌もあっという間に伝染するということを考えるとそれも納得できる。家庭や会社の中において、朝から晩まで、全員が不機嫌だとしたら、その家庭も会社も、早晩崩壊してしまう。上機嫌も不機嫌もあっというまに周りに伝染する。どうせ伝染するなら上機嫌の方がいいに決まっている。

■哲学者アランの言葉もこれに近い。感情に流されてばかりだと悲観的になる。それを意思で克服すると楽観的になれる。

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『一冊まるごと渡部昇一』

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渡部昇一

人生を長いスパンでとらえると、好調のリズムにあるときと不調のリズムにあるときがあります。私は書斎の人間ですから、好調、不調といってもリズムの振幅はそれほどではありませんが、政治や経済の世界に生きる人は、相当の揺れの幅があるでしょう。
好調のリズムにあるときは問題はありません。その波に乗っていけばいいのです。では、不調のリズムに陥ったときはどうすればいいか。まったく不当に社長の座を追われたという人に会ったことがあります。話題はすぐに社長の座を追われたことになり、その人はいかに理不尽ないきさつでそうなったかを綿々と述べます。私はなんだか鬱陶しい気分になってしまいました。あとで聞くと、その人は口を開けばその話ばかりなのだそうです。その人には社長の座を追われたことは忘れない鮮明な記憶なのでしょう。しかし、その話を聞かされる側は、そう言われればそういうこともあったかなという程度の記憶しかないものなのです。
好調のリズムに乗っているときはよく目立ちます。しかし、不調のリズムに陥っているときは、まわりはその人が不調のリズムに陥っていることさえ気づかない場合がしばしばです。人間の他人に対する関心とはそのようなものです。その人は決して復活することはないだろうな、と私は思いました。他人が忘れているようなことをいい立てるのは、不調のリズムの振幅をわざわざ大きくするようなものだからです。事実、その人が復活したという話は、いまだに聞きません。

■三井の益田鈍翁は、中上川彦次郎によって経営の中枢から遠ざけられた時期がありました。そのとき、鈍翁はどうしていたか、お茶を楽しんでいました。そして中上川が行き詰まったとき、復活を果たすのです。

■イギリスの名宰相チャーチルも若い時から好不調の振幅が大きい人でした。困難に耐えて対独戦を指導し、ついに勝利を手にした最大の功労者です。それが勝利をつかんだ直後の選挙で落選してしまうのです。
そのときチャーチルはどうしていたか。絵を描いたリ歴史を書いたりしていました。そして次の選挙で復活し、首相の座に再登場することになるのです。彼の生涯はそのパターンの繰り返しでした。不調のリズムに陥ったとき、それを恨み、こだわっていては、かえって不調の振幅を大きくし、その波に飲み込まれて視野を狭くしてしまいます。腐らず恨まずこだわらず、距離を置いて余裕を持つ技術が大切です。それが鈍翁にとってはお茶であり、チャーチルにとっては絵や著述だったのです。その技術があれば目配りがきき、有効な戦略を備えることができて、好調なリズムに変えるチャンスがきたときに、逃さずにものにできるのです。

■松原泰道師(つまずくことが多い人ほど、大きなものを掴んで成功している。 日本人への遺言 )より
『元外務大臣で戦犯になった広田弘毅さんが、外務省の欧米局長のときに後の首相、幣原喜重郎に嫌われて人事異動でオランダ公使に飛ばされるんです。当時はオランダと日本は通商がなかったので、この移動は左遷でした。皆はこれを心配しましたが、当の本人は平気のへっちゃら。そのときの心境を得意の狂句で吟んでいます。 「風車 風が吹くまで 昼寝かな」 風車はオランダのトレードマーク。オランダは風車が有名、風車は風が吹かないとどうにも仕方がない、風が吹くまで昼寝かな、と詠んだわけですね。
彼はのほほんとしていたけれども本当に昼寝をしていたわけではもちろんありません。その逆境時に、外交的ないろんな情報を集めて勉強するんです。そして再び中央に戻ってソ連の大使になったときに、その成果を発揮して成功を収めたのです。彼は機が熟するのを待ったわけです。慌てることなく、じっくりと。物事にはいいときも悪いときも必ず“流れ”がある。 これに抵抗してはダメだと思うのです。無理して慌ててもいい結果は得られません。たとえ逆境の中だろと腐らずにいれば必ずチャンスはやってくる。そのときのために努力を続けること』
広田弘毅は、第32代の内閣総理大臣になった。逆境のときに、まわりに、文句や不平不満を言う人は、それを自分の肥やしにして、飛躍することはできない。人は、逆境のときや、職を退くときの、対応や態度によって人間の器の大きさがわかる。不調のリズムに陥っているとき…腐らず、文句を言わず、飄々と生きてみよう。

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わが人生に刻む言葉

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ウシオ電機会長、牛尾治朗

かつて、修業とか修養とかは精神的に豊かであるために、つまり人間が人間らしく暮らしていくために必然のものでした。そうでなければ、ともすれば不足、不便がつきまとう暮らしに押しつぶされて、人間らしく生きられなかったからです。
だが、何もかもが満ち足りて便利になると、人間は自分を鍛えることを放棄してしまった。自分の精神のありようがどうだろうと、物質的な豊かさや便利さが補いをつけてくれるからだ。少し持って回った言い方をすると、精神の物質化ということになります。修業したり修養を積んだりして自分を鍛えることが疎かになると、自分を見つめることが少なくなりますから、人間はどうしても自分に甘くなります。謙虚さが失われます。その結果として、自分中心になりがちです。自分に甘く、謙虚さがなく、自分中心の考え方をし、行動をとる。
最近、そういう傾向が強まっているのは、精神を物質化させ、それでよしとしている風潮と無関係ではない。残念ながら、政界や財界のリーダーと目される人びとにも、出処進退に関してそういうことが間々見られます。

■「春風を以(もっ)て人に接し、秋霜(しゅうそう)を以て自ら粛(つつし)む」江戸時代の儒者・佐藤一斉の『言志四録』より。
人に対するときは春風のように穏やかで和やかな心、伸びやかで寛大な心で接し、自分に対するときは秋の霜(しも)のように鋭く烈(はげ)しく厳しい心で律していかなければならない、という意です。対人関係の基本にこの心がけを据えることができる人は、修業や修養によって自分を厳しく鍛えている人です。だが、現実にはこの逆の人が増えているように思われます。人には秋霜の心で接し、自分に春風の心で対する人です。何か問題が起こると、その原因や責任は他人のせいにして、自分には関わりがないとばかり顔を拭ってやり過ごそうとする人が何と多いことか。自分に対して春風の心でいるから、そうなるのです。

■「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)」これは、秋の冷たい霜や、夏の焼けつく激しい日差しのような、厳しい気候のことをいう。
刑罰や権威などが極めて厳しくおごそかであることを指す。日本の検察官のバッジのデザインともなっている。しかしながら、普段人と接するときは、これとは反対の言葉、「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」でなければならない。春風駘蕩とは、春風がそよそよと気持よく吹くことをいい、温和で、のんびりとして、のどかな人柄をさす。そして、自分に対しては「秋霜烈日」で厳しく律していく。シビアな自己コントロールだ。それを「自律」という。

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『未来の呪縛』

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ジャーナリスト、河合雅司

なぜ、日本の少子化はここまで深刻な状況になってしまったのであろうか。2017年の年間出生数は94万人ほどにとどまり、2年連続での100万人割れという危機的状況にある。戦後のベビーブーム期には270万人近くいたことを考えれば、わずか70年ほどで3分の1になった計算だ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によれば、このままで推移すれば2115年の出生数は31万8000人まで減る。こんなハイペースで減ったのでは、日本人はやがて絶滅のときを迎えよう。それにしても日本の少子化は異常だ。

一般的に、文明が成熟すると少子化は進む。経済が発展して多くの人が豊かになると死亡率が下がり、同時に出生率も低下する傾向がみられるのだ。だが、少子化が文明の成熟だけで起こるのならば、先進国はおしなべて少子化に直面していなければいけないはずだ。だが、調べてみると、そんなことはないのである。

2010年を「100」とした場合、50年後の2060年には、先進各国の総人口がどうなっているかを、社人研が予測している。人口が減るのは日本、ドイツ、韓国だけである。
中でももっとも減少幅が大きいのが日本の67.7だ。韓国は89.9で、ドイツは79.1だ。日本の突出ぶりが分かるだろう。それ以外の国はどうなっているのか。アメリカは142.1と今より40%も増加が見込まれているし、オーストラリアは163.1と大幅な増加が予測されている。伸び率こそ少ないが、イギリスが131.4、フランス116.8である。イタリアは102.8とほぼ横ばいと予測されている。同じ先進国でもこれだけの違いがあるわけだ。

なぜ人々は鈍感だったのだろうか。少子化の影響というのは、変化が乏しいことに原因がある。「きのう」と「きょう」で違いを見つけることなど不可能であろう。いまだ呑気な人は少なくない。国会議員や首長からしてそうだ。この期に及んでも「少子化に歯止めをかけます」と威勢のいい公約を掲げている。
残念ながら日本の少子化は止まらない。なぜならば、過去の少子化で子どもを産める年齢の女性が減ることが決まってしまっているからだ。今、我々がやりうることといえば、少子化に歯止めをかけるというスローガンを掲げることではなく、少子化のスピードを緩めるためにあらゆる手立てを講じることである。そして、少子化を前提とし、それに耐えうる社会へと土台から作り直すことだ。こうした地道な努力を続ける中で、いずれ出生数が本格的に回復する時期が到来するのをじっと待つしかない。

■少子化に歯止めをかける10の提言
1.高校同級生ボランティアチームの結成  
2.お見合いの普及  
3.「未来の人生年表」をつくる  
4.20代対象の「母親応援手当」の創設  
5.第3子以上に1000万円給付  
6.「父親休暇」制度の導入  
7.子育て世帯の全国転勤凍結  
8.「全母親支援センター」の全国展開  
9.「育児保険」の新設  
10.ゼロ歳に選挙の投票権を付与  
【番外】社会保障費循環精度の導入

10のゼロ歳に選挙の投票権を付与とは、米国の学者、ポール・ドメイン氏が提唱している。子どもたち「1票」を与えるといっても、直接投票させるわけではなく、保護者が代理人となり、子育てにプラスになるような政策を掲げている候補者に投票をできるようにするということ。

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