認知症で本当に攻撃的な人はいない

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イヴ・ジネスト 認知症ケア方法「ユマニチュード」考案者

認知症の高齢者は暴力的だろうか?暴力的というのは、ケアしようとする時に、ひっかいたり、暴言を吐いたり、拒否したりする事でケアの実施が困難になる行動だ。

認知症の高齢者で攻撃的な人はいない。私達が攻撃的だと感じてしまうのは、どういう時か。例えば、自分が誰かに腕を掴まれる事を想像すれば分かる。認知症であれ、誰であれ、自分が掴まれた時には、相手からの強制的な意図を感じる。

まして掃除するみたいに、身体を洗浄されれば、ケアを暴力的で不快に感じるのは当然だ。

認知する能力が低下しても、人の感情は最期まで残る。つまり不快なメッセージは認識でき、その不快な状況から身を守るために抵抗する。認知症の人の暴力的な行為は攻撃ではなく、自分を守ろうとしているだけだ。むしろ攻撃しているのは、ケアしてる側なのだ。

認知症の高齢者に原因があると考えてしまうのは、ケアする側に、相手にとって常に良い事をしている筈だという思い込みがあるからだ。実際は、そうではない事を、ケアする人は自覚する必要がある。
振れる部位にも適切な順番がある。ケアする場合には、まず社会的に触ってもいいニュートラルな体の部位に手を置く。看護学校では顔を拭く事から始めるように教えるが、相手と良い関係を結ぶ観点からは正しくない。顔や陰部は、とても敏感であり、良い関係を確立し、最期に触れるべき部位である。

想像して欲しい。いきなり顔を拭かれたり、部屋に入るなり、おむつの中を確認されたりしたらどう感じるだろうか。ケアする人が無意識にしている事が抵抗を誘発している。認知症の人に横から呼びかけても反応しないことがある。視野が狭くて見えていないのではない。見えていても、その意味を認知できないのだ。

だから、相手の視線を正面からとらえ、出来るだけ近い距離から話しかける必要がある。相手が認識していない状態でケアを始めれば、驚いて抵抗するのは当然である。

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