デキるビジネスマンの「お礼状」は字が汚くても印象に残る理由

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「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣 より菊原智明:営業サポート・コンサルティング代表取締役

〇意外に難しい「お礼状」を送るという行為
私は多くの方とお会いし名刺交換させていただく。その中で、ご丁寧にお礼状を送ってくれる方もいる。お礼メールでさえ送らない人か多い中、本当にすばらしいと思う。出会った人にお礼状を送るというのは“分かっていてもできない行動”の代表的なものだ。簡単そうに見えて、いざやってみると結構難しい。まずは《何かを書いたらいいのか?》と迷いだす。短い文章だとしても書き慣れないと、なかなか筆が進まないものだ。さらには《字が下手なので送るとかえって逆効果になるのでは》と心配する人もいるだろう。過去の私もそう思っていた。 結果的な「お礼状」という観点で言えば、文章や字の上手さなどはあまり関係がない。むしろ達筆で小奇麗なお礼状より、ちょっと汚い字で書かれていた方が好印象だったりする。むしろ字が下手な人ほど効果的であり、ぜひ活用してほしいと考える。

〇芸術的なお礼状なのに物足りなさを感じた実例で解説しよう。
以前、多ジャンルの人が集まる交流会に参加したことがあった。こういった場所では当たり障りのない会話だけで終わりがちなものだが、その時はなぜだか気が合い、3人の方と仕事からプライベートまで結構深いところまで話し込んだ。それから数日後、まずはAさんからお礼状が届いた。和紙風のハガキに墨文字でメッセージが書かれており、非常に芸術的な印象を受けた。なかなかここまでのものを送ってくれる人はいない。確かに嬉しかったのだが、なぜだか物足りなさを感じた。とはいえ、その時点ではAさんが一番印象に残った。
その翌日、Bさんからお礼状が届いた。Aさんのように芸術的ではなく、ボールペンで普通に書かれたもの。書かれている字もお世辞にもうまいとは言えない。しかし、このお礼状はとても印象に残った。ちなみに残りの一人のCさんからはお礼状もメールも届かなかった。Aさん、Bさん、Cさんを比較すると、お会いした時はBさんが一番印象に残らない方の人だった。しかし、Bさんからお礼状をもらった時点で、一番印象的な人に変わった。

〇最後に書かれていた1文で印象がガラリと変わった
何も接触がなかったCさんは別として、AさんとBさんの差はなんだろうか?理由はBさんからいただいたお礼状には“その人と私だけが知っているエピソード”が書かれていたからだ。お礼状の最後に「娘さんの受験、よかったですね」と手書きで書いてあった。その1文で《菊原さんだけのために書きました》というのが伝わってきたし、すごくうれしい気持ちになった。
一方Aさんは、ハガキは芸術的だったものの、他の人にも同じものを送っているように感じた。名前こそ「菊原さん」となっていいたが、その部分を「山田さん」「佐藤さん」に変えても十分意味が通じるものだ。これがAさんとBさんの違いだったのだ。
Bさんは長期間「結果」を出し続けている営業マンである。その訳もうなずける。これはお礼状だけでなく、メールを送る時にも言えることだろう。《大勢の人に同じものを送っています》という雰囲気が出てしまうと、お客様はシラけるもの。送らないマシだが、会社で用意したテンプレートを使ったのでは効果は低くなる。テンプレートを使わず一人ひとりに丁寧に送ったとしても《みんなにも同じものを送っているのだろう》と思われたのではもったいない。お客様と自分しか知らないエピソードを1文でも伝えるからこそ、お礼状でもメールでも効果が何倍にもアップするのだ。

〇その「ひと手間」によって営業成績の「結果」は変わってくる
とはいえ、私自身、これができていたかというとそうではない。実はダメ営業マン時代は、お会いしたお客様へのお礼状を事務の人に丸投げしていた。会社で用意した印刷物をそのまま送るだけ。メッセージなど一切書かなかった。もちろん効果などない。こんな無機質なハガキを送ったところで、お客様の心はつかめないのだ。
一方、当時トップ営業マンだった先輩はまったく違っていた。さまざまな業務に追われているにもかかわらず、お客様とのエピソードや関連した事を必ず一言添えて送っていた。こういった「地道な行動の差」が大きな結果の差になって現れていた。その先輩の契約数は私の5倍以上だった。 あなたは、どんな内容のお礼状、お礼メールを送っているだろうか?「会社から与えられた文章をそのまま送っている」という人は、今日からお客様との事を一言添えて送ってほしい。その「ひと手間」によって、あなたの営業成績は大きく結果が違ってくるものだからだ。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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