『ビジネスにはデザイン思考が必要』

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佐宗邦威b

いま、スタンフォードやハーバードなどの米国のMBAトップスクールに通う人たちの間で人気が高まっている授業に、「デザイン」があります。ビジネスキャリアの中でデザインを学ぶということは、欧米のトップスクールでは当たり前になっているのです。

MBAでは論理的思考をベースにした「ビジネスをより効率的にするやり方」を教えるアプローチが取られているのに対し、デザインは今までの延長線上にはない「まったく新しい事業、商品やサービス、プロセス等を創るやり方」を教えています。世界中の企業が大きな変革を求められ、既存のビジネスを立て直すだけでなく、新規事業を創り出す動きがより盛んになっています。なので今、世界のMBAトップスクールは、「デザイン」を取り込む潮流の中にあります。

《先進国企業のビジネスに求められるイノベーション》
日本をはじめとした先進国では、社会が成熟するに従って、企業は非連続なイノベーションを生み出し続け、生き残りを図らねばならない事態に直面しています。新興国の財閥や巨大ベンチャーとの競争も激化し、既存の企業は収益モデルの大胆な転換を求められています。

「目の前で本業が消えていく」「新たな新規事業を作らないと生き残れない」そんな会話が会社内で飛び交う機会も増えています。

《一億総クリエーターとなれるインフラの整備》
インターネットとスマートフォン、ソーシャルネットワーク(SNS)の出現は、社会の構造を変えてしまいました。創作活動や表現活動といえば、これまでは一部の人にしかできませんでしたが、スマートフォンとパソコンさえあれば、誰にでもできるようになりました。Facebookのユーザー数は世界中で13億人、画像共有のインスタグラムのユーザー数も3億人に達しました。個人がWEBサイトを立ち上げ、SNSのコミュニティーを駆使してマーケティングを行って生計を立てることも当たり前の時代になりました。自分の創造力を活用して、日々の自分の生活をデザインし、やる気になれば商売をしていくことも可能になっています。

《機械と人間の仕事の奪い合い》
ディープラーニングをはじめとする人工知能は、今後20年でめざましく発達し、それに伴って、これまで人間が行っていた仕事が機械に代替えされます。オックスフォード大学のオズボーン教授によって発表された「コンピューターの進化によって消える職業調査」によると、代替えされにくい職業としては以下の2つが挙げられています。
1. ヘルスケアやラーニング、心理学などの人との「深い」コミュニケーションに関わる仕事
2. デザインやエンジニアリング、経営などの「創造」の中心にいる仕事

《自分らしい幸せを求める「足るを知る時代」へ》
社会が成熟した先進国において、人々が求める価値が、物質的な満足から精神的な満足へと変化しています。2050年には、世界の人口は90億人を迎えることが予想されています。限られた資源を今までの倍の人に行き渡らせることが人類の課題となる21世紀は、「自分らしい足るを知る時代」になっていきます。

日々、創造力を発揮するようになると、幸福感が増します。一人ひとりが、自分の生活スタイル自体をデザインし、自分の好みや天性に合った生活を送ることで幸福感を感じること。そのためのスキルとして、「創造力を発揮させる力」が重要になっていきます。

京セラ名誉会長の稲盛和夫
「会社の経営は芸術作品を生み出すのと似ている。 真っ白なキャンバスに創造力を駆使して美しい絵を描いていく作業と同じだ」これからのビジネスは、先行して繁盛している会社を、マネして何とかやっていこうと考えるところは、いつか必ずダメになる。オリジナリティ、クリエイティブ、独創性、創意が、今後さらに重要視される。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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