『生涯投資家』

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「村上ファンド」創設者、村上世彰氏の自伝。

割安に評価されていて、リスク度合いに比して高い利益が見込めるもの、すなわち投資の「期待値」が高いものに投資をすること。

100円を投資する場合の「期待値」の計算方法
・0円になる可能性が20%、200円になる可能性が80%であれば、 期待値は1.6(0×20%+2×80%=1.6)
・0円になる可能性が50%、200円になる可能性が50%であれば、 期待値は1.0 (0×50%、2×50%=1.0)
・0円になる可能性が80%、200円になる可能性が20%であれば、 期待値は0.4(0×80%+2×20%=0.4)

この期待値が1.0を超えないと金銭的には投資する意味がない、というのが基本的な考えです。この計算方法からすると、たとえ0円になる可能性が70%であっても、700円になる可能性が30%あれば、期待値は2.1。この「期待値」に、IRR(内部収益率)、リスク査定を加味した3点から投資を行う。
著者が攻撃するのが、「株主と向き合わず」「経営者が保身に走り」「株主価値を鑑みない」放漫経営の経営者。

子どもの頃、預金通帳に印字された数字が増えていくのを見るのが好きだった。だからよく父に、「お小遣いちょうだい、ちょうだい」とせがんでいた。使いたいからではなく、貯めるためにお金が欲しかった
百貨店に行くのも大好きだった。おもちゃをねだったり、貯めた小遣いで何か買うためではない。いろいろな商品の値札を見ては、「これは高い、これは安い」と騒いでいた。商品そのものより、商品の価値に興味があったのだ

父の仕事は投資家だった。いつも、「お金はさみしがり屋なんだ。みんなで戯れたいから、どんどん一カ所に集まってくるんだよ」と言っていた
父はいつも「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな」と言っていた

私の投資は徹底したバリュー投資であり、保有している資産に比して時価総額が低い企業に投資する、という極めてシンプルなものだ
当時の東急ホテルは時価総額が100億円ほどだったが、保有する赤坂の不動産だけで、時価換算にして500億円くらいの価値があった。東急電鉄という20%の大株主がいるせいで株式の流動性も低く、株価は割安のまま放置されていたのだ

日本の上場企業には、自社株も持たずに経営をしている取締役が多すぎる
私が東京スタイルに求めていたのは、余剰資金をどう活用するかについての経営者の明確な説明だ。余剰資金は、より利益を出すための投資に振り向けるか、そうでなければ株主に還元すべきというのが、私の持論だ

極端な例として、時価総額の開きが大きい2000年2月を見てみる。フジテレビの時価総額が2兆6200億円であるのに対し、ニッポン放送は2400億円ほど。実際には、保有するフジテレビ株の価値だけで9000億円近い資産を持っているにもかかわらず、である

私はこの頃、クレイフィッシュに対する投資と同じ理由で、サイバーエージェントの株を購入し、大株主となった。時価総額が100億円を大きく下回っているにもかかわらず、上場時に調達した資金が現預金+有価証券という形で180億円ほど残っていたからだ
「たくさんの手元キャッシュや利益を生み出していない資産をお持ちのようだが、これらを今後の事業にどのように活用していく計画なのか」
資金を眠らせて世の中への循環を滞らせることこそ、上場企業がもっともしてはならないことだと思っているから、必ずこの質問をするのだ。しかし明確で納得のできる回答は、ほとんど得られない

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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