『世界史を創ったビジネスモデル』

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野口悠紀雄

「ビジネスモデル」という概念は、企業だけでなく、国にも当てはまる。国がどのような活動を行なうかは、ビジネスモデルの選択と考えることができる
重要な概念は、「多様性の確保」と「フロンティアの拡大」だ。

多様性を実現できた国や企業は、できなかった国や企業に対して優位になることが多い
ローマを支える柱は、軍と奴隷である。軍を養うには税収が必要だし、退役後の兵士に与える土地を獲得するには領土を拡張する必要がある。これらは周辺地に侵略し、征服することで得られる。そして、戦争は奴隷の最大の供給源だ。つまり、戦争はローマにとっての中核的「ビジネス」なのだ

公共施設といえば国や地方公共団体の予算で建設するものだと、我々は思っているが、ローマでは、実力者が私費を投じて作ったのだ
ローマとアメリカの類似点のもっとも重要な共通点は、戦争後の対外政策にある。それは、よく言えば「寛容主義」であり、やや否定的なニュアンスを含めて言えば、「敗者同化主義」だ

人間が自ら進んで働くには、第1に未来への希望が必要だ。そして第2に、勤勉に働いたことが正しく評価される仕組みが必要だ
アウグストゥスは、それまでの空間的なフロンティアの拡大が限界に来たことを知り、それに代わる新しいフロンティアを、通商の拡大に求めた

時代精神を体現したビジネスモデルが生まれるのは稀だ。現代で言えば、その稀な例が、iPhoneの登場だ。これが画期的であったのは、もちろん、それが優れた装置であり、便利だからである。また、それだけでなく、時代の精神を体現しているからだ
優れたビジネスモデルは、単に金を儲けるだけのものではない。また、余剰労働力を活用するだけのものでもない。そこには、人々を燃え上がらせるものが含まれているのだ

広い領土は持たず、国を全世界に向って開放する。そして、貿易を中心的な産業とし、少数精鋭で大きな収益を実現する。これは、広い領土と多数の国民を持ち、主要産業は農業である大陸型国家とは異質のものだ。
海洋国家は、ヴェネツィアやポルトガルが意識して採用した、国としてのビジネスモデルなのである

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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