THE ONE THING

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ゲアリー・ケラー

クリスマスをはじめ、
人々に幸せをもたらすあらゆるものを嫌悪している、
無慈悲で、しみったれで、どん欲で、
守銭奴の代名詞のようにいわれる男スクルージ。
チャールズ・ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』の
主人公、エベニーザ・スクルージだ。

あるクリスマスイヴのこと、スクルージのもとに
かつての共同経営者ジェイコヴ・マーレイの亡霊が現れる。
マーレイは嘆き悲しんで言う。

「私が今夜ここに来たのは君に警告するためだ。
君にはまだ私のような運命を免れるチャンスも希望もある。
いずれ3人の精霊が君のもとに現れるだろう」

やがて精霊たちがやってきて、
スクルージの過去、現在、未来を見せる。
それはぞっとするような経験で、
翌朝目覚めても、彼の動揺はおさまらなかった。
めまいを感じながらも、
彼はまだ運命を変えるだけの時間があることに気づく。

通りに飛び出すと最初に出会った少年に、
市場で一番大きな七面鳥を買って、
彼のたった一人の使用人ボブ・クラチットの家に
名前を伏せて届けるように頼む。

また、以前貧しい人のための施しを懇願されて
はねつけた紳士に会うと、
すぐに許しを乞い、多額の寄付を約束する。

最後に甥の家に行き、
長いあいだ自分が愚か者だったことを詫び、
祝祭の晩餐の招待を受け入れる。
甥と妻と客たちは、彼が心から喜んでいる様子にひどく驚く。

翌朝、クラチットが遅刻して出勤してくると、
スクルージが待ちかまえていて、いつものように怒鳴る。
「こんな時間に来るなんて、どういうつもりだ?
もう我慢ならない!」
しかしスクルージの次の一言を聞いて、
クラチットは耳を疑う。
「だから、君の給料を上げようと思う!」
その後もずっと、スクルージはクラチット一家の力になる。

クラチットの末息子で病弱なティムのために医者を見つけ、
ティムの第二の父ともいえる存在になる。
彼は残りの人生を他人につくすことに
時間とお金を費やしながら生きていく。

マーレイの亡霊が現れたあとスクルージはどうなったか?
彼の目的は変わり、それが最優先事項を変え、
その結果、生産力を向ける対象が変わった。

マーレイのおかげで、スクルージは
新たな目的の力、変化を引き起こす力を
身をもって知ったのだ。

物語が終わるころには、スクルージの目的は
もはやお金ではなく、人間になっている。
人との交わりに幸せを感じ、
なんとか救いの手を伸ばそうとする。

お金をため込むことより人を助けることに価値を見出し、
お金は人のために役立ててこそ、のものだと考える。

どんな人間か、どこへ行こうとしているのかによって、
その人が何をし、何をなしとげるかが決まる。
目的を持って生きる人生は、
どんな人生よりも力強く幸せである。

人の生き方にとって、もっとも大事なことは、その方向性だ。
どちらを目指して進んで行くかによって、
人は全く違った道を歩んでしまう。
己の欲のために生きるのか、人の喜びのために生きるのか。

意欲が強ければ強いほど、間違った方向性を目指すなら、
その崩壊のスピードは早まる。

我々はいったい、どこを目指しているのか、
どんな人生を歩もうとしているのか。
人の喜びのために生きている人は幸せだ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『幸せを感じるには』

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小林正観

生れてからずっと目が見えていない人は、
「1秒でもいい、いや0.1秒でもいいから、
親の顔を見てみたい」
「結婚した相手の顔を見てみたい」
「子どもの顔を見てみたい」と
思いながら生きているそうです。

私たちは、0.1秒どころか、生まれてこのかた
目が見えないことなどないにもかかわらず、
目が見えるということに対して、
感謝することなどまずありません。

それどころか、「あれが欲しい」「これが欲しい」
「あれをよこせ」「これをよこせ」と
現状に対して不満ばかり口にしています。

私たちは小さい頃から、足りないものをリストアップして、
それを手にいれなければ幸せになれないと
教え込まれています。
そのように洗脳されているのです。
それを、「夢と希望に満ちあふれた生活」といいます。

それに対して、私は「夢と希望もない生活」を送っています。
夢も希望もない代わりに、
悩みも苦しみも煩悩もありません。

私は酒もタバコも麻雀も、娯楽といわれるものは
何もしませんし、休みもほとんどありません。

「何が楽しくて生きているのですか?」と
ときどき尋ねられることがありますが、
「ただ幸せをかみしめて」生きている。

「自分がいかに恵まれているか」「自分がいかに幸せか」
「自分がいかにありがたい状況に生きているか」
ということに気づいたら、
「不平不満・愚痴・泣き言・悪口・文句」の「五戒」など
口から出てきません。

願いがかなったら、望んだものが手に入ったら感謝する、
というのは、本当の感謝ではありません。
何も要求することなく、不平不満を言うこともなく、
いま目の前にあるものをありがたく味わう。
それこそが、本当の「感謝」なのです。

人は、自分がいかに幸せな状況のなかで
生きているかに気がつきません。
それは、海で泳いでる魚は、海を見ることができません。
それで「自分も海をみてみたい」と思い、
釣り人が垂れている釣り糸にガブリ!とかぶりつくのです。

すると海の上に引っ張り上げられる。
それで初めて、魚は海というものを見ることができるのです。

釣り上げられた魚が「私」なら、釣り上げた人とは「神さま」。
釣り上げられた状態は何かといえば、「事故、災難」。
海とは、「幸せ」そのものです。

神さまに「幸せというものを見せてください」と言うと、
神さまは「わかりました」と言って、
災難や事故というものを起こして、
私たちを釣り上げてくれます。

かぜをひいて、丸1日何も食べられなかったら、
かぜが治ったときに食べた1杯のおかゆが
とてつもなくおいしく感じられるでしょう。
元気いっぱいで毎日おいしいごちそうばかり食べていたら、
おかゆのおいしさはなかなかわからないでしょう。

では、かぜで丸1日食べられなかったことは、
はたして不幸なことだったのでしょうか?
そうとはいえないでしょう。
その体験があったからおかゆのおいしさ(幸せ)を
味わうことができたのです。

私たちが「幸せ」を感じるためには、
その前には一般的に「つらい、苦しい、大変」と
いわれる状況が起こるようです。
そういう構造になっている。

そのことに気づいたら、私たちはつらいこと、苦しいこと、
大変なことに遭遇したときも、
一喜一憂せずに、平静な心でいられるかもしれません。

人は、「失って初めて、その大切さに気づく」
という習性がある。
それは、両親だったり、恋人だったり、健康だったり、する。
当たり前の日常が、いかに大切な日々だったのか、
いかに有り難かったのか。
やっかいなことに、それを失ってみないと気づかない。

「ありがとう(有り難う)」の反対は、
「当たり前」だと言われる。
目が見えることも、耳が聞こえることも、
話しができることも、本当は、当たり前ではない。
有ることが最も難しいことなのだ。
奇跡のようなこと。
そのことに気づいたとき、当たり前のように過ぎていく
日常には感謝しかなくなる。

それは、自分の体に対しても同じ。
寝ている間も動いてくれている心臓や肺、
ありとあらゆる臓器は文句もいわず
365日休みなく動いてくれている。

自分がいかにありがたい状況に生きているか、に
気づける人でありたい。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『チャンスを掴む』

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内藤誼人

会社はわざわざお金を出して
、みなさんに教育を施そうとしてくれる。
新人訓練、社内訓練などの名目で、
いろいろな訓練をしてくれる。
そういう訓練への参加を嫌がる人がいる。

自分はまったくお金を出していないのに、
いや身銭を切っていないからなのか、
真剣に訓練を受けようという気がない人がいる。
もしそういう訓練をしてくれるのなら、積極的に参加したい。

たとえそれが、自分の仕事とは無関係であるように思えても、
それでもムダな訓練というものはない。
必ず、何かしら役に立つ。

どんな訓練にも積極的に参加する人ほど、
仕事はうまくいくのである。
どんな技術でも、知識でも、貪欲に吸収してやろう、
という人が伸びていくのである。

オーストラリアにあるクィーンズランド大学の
フィリス・タレノーは、あるオーストラリア企業で働く社員
(男性501名、女性513名)を対象に、
会社での地位、給料、部下の数、の3つの指標を
「キャリア・サクセス」とし、
どういう人ほどサクセスの度合いが高いのかを
調べてみたことがある。

そこで明らかにされたことは、“訓練への参加度”であった。
成功している人は、「会社で行われる訓練に
何回参加しましたか?」という項目と、
「社外のセミナーや訓練を何回受けていますか?」
という項目で回答頻度の高かったのである。

私は社会人向けのセミナーの仕事も受けるが、
会社からムリヤリ行かされたような人は、
まったくやる気がない。
そういう人に教えるのは、講師である私も
遠慮させていただきたい。
他の人まで悪影響を与えるからだ。

たかが、社内訓練。
されど、社内訓練だ。
訓練をナメてはいけない。
どんな訓練にも本気で取り組めるような人になろう。

どのようなスポーツにおいても、
監督に認められない選手は試合には出してもらえない。
だから、誰に対してアピールしなければいけないかというと、
それは間違いなく監督。

社内訓練やセミナーへの出席も同じで、
その出席率は上司や社長が一番よくみている。
そんな素晴らしいアピールの場を逃がす人は、
チャンスや運も逃がす人と言っていい。
上司や社長はそれをよく見ている。

また、わざとらしくてミエミエだから、
セミナー出席などではアピールしない、
などと妙にひねくれて言う人がいるが、
そういう人には可愛げがない。
素直でない人は、まわりから可愛がられない。

人は、死ぬまで勉強を続け、
少しでも自分を高めていくことが必要だ。
どんな勉強もムダなものはない。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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大丈夫だよ、すべてはうまくいっているからね

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斎藤一人

しあわせを見つけるのがヘタな人は、
商売の成功の仕方を見つけるのもヘタです。
うまくいってない人って、しあわせも成功も、
「見つけるもの」だと思ってないの。

「与えられる」か「偶然入ってくる」ものだと
思っているんです。
チャンスも「来るもの」だと思っていて、
「見つけるもの」だと思っていません。
ようは、日ごろから“見つけグセ”がないんだよ。

「ご飯が食べられてしあわせ」とか
「仕事ができてしあわせ」とか、
しあわせを探すクセが日頃からあるかどうかなんです。

ちょっと自分にイヤなことがあっただけで
「最悪だ!」って言っている人生と、
「今日も朝起きられてしあわせ」って言う人生では違います。
「しあわせのタネ」を見つけられる人って、
「商売のタネ」を見つけるのも上手です。

しあわせな人って、いいところを見つけるのが上手なんだよね。
そういう人が「売れているお店・人気のお店」に行ったら、
その店のいいところをたくさん見つけます。
そしてその中で、自分でマネできることをするんです。
逆に不幸な人って、悪いところを見つけるのが上手なんです。

「売れているお店・人気のお店」に行っても
「あそこがダメだ」「ここがなってない」とか言って、
いちいち“重箱の隅をつつく”ようなことをするんです。

人を雇うのでも、
しあわせな人は、その人のいいところを見つけて、
そこをほめて伸ばそうとします。
でもうまくいってない人って、
悪いところを見つけてはそこを指摘して、
直させようとするんだよね。

「仕事の成功論」と「心のしあわせ論」は同じなんです。

《毎日の生活の中で「しあわせのタネ」を探してごらん。
じつは毎日、
たくさんのタネをいただけていることに気づくから》

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『メンタルが強くなる』

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中谷彰宏

メンタルを強くしたいと思うなら、マナーをよくすることです。

たとえば、クルマを運転していて窓からタバコを捨てる人は、
眉間にシワが寄って、不機嫌な顔をしています。
もともと不機嫌でイライラしている人が、
クルマの窓からタバコを捨てるのではありません。
窓からタバコを捨てるというマナーの悪いことをするから、
不機嫌になるのです。

新幹線で黙ってリクライニングシートを
いきなり倒してくる人も、不機嫌な顔をしています。
うしろの人が不機嫌になるのは当たり前です。

原因は、行動の側にあります。
感情がもとで行動が起こるのではなく、
行動がもとで感情が湧いてくるのです。

お弁当を食べている最中、前の人がいきなり
シートを倒したためにお茶が倒れた時、
その人の行動は2通りに分かれます。

1. 前の人に仕返しができず、うしろの人に仕返しをする。
2. 前の人に文句を言うかわりに、うしろの人に超感じよく
「すみません、椅子を倒していいですか」と言う

そうすると、突然、感じの悪い人の次にあらわれた
神様のような人になります。
前の人のおかげで、自分が神様になれるのです。

「うしろの人に仕返しをする」は、メンタルが下がります。
マナーの悪い人に感染してしまうのです。

「超感じよく言う」はメンタルが上がります。
この時、「なんだ前のヤツ」と、ムッとしないことです。
ムッとする人は、視野が狭いのです。

ふだんから負のオーラを出している人と
かかわり合わないことです。

ただし、会社の中では接する人を選べません。
上司が怒鳴った時は、
いきなりリクライニングシートを倒してくる人と同じです。
その時にムッとして、自分が勝てる相手に怒りをぶつけると、
自分のメンタルはもっと下がります。

上司にいきなりリクライニングシートを倒された時は、
「チャンスボールが来た」と思えばいいのです。
うしろの人に感じよく
「すみません、椅子を倒していいですか」と
キムタクのような顔で言うと、自分のメンタルが上がります。

メンタルが下がるような事態が起こった時は、
メンタルを上げるチャンスなのです。

五日市剛
「嫌なことがあったら、自分に『ありがとう』といい、
また、いいことがあったら、『感謝します』というといい」

嫌なことやツライことがあったときは、
ついイライラしてグチや泣き言や文句といった
マイナスの言葉が出てしまう。
すると、マイナスの言葉がまたマイナスを呼び寄せ、
悪循環になってしまう。
その負の連鎖を断ち切る言葉が、「ありがとう」だ。

誰かに嫌なことをされた時も同じ。
嫌なことをされたから、そのウップン晴らしに、
自分より弱い立場の者にそれをぶつける。
それが負の連鎖となる。

しかし、「ありがとう」と同じで、嫌なことをされたら、
反対に、他の人には超絶いい感じで接する。
それが自分のメンタルやパフォーマンスを上げることになる。

嫌なことをされたときは、
「メンタルを上げるチャンス」と捉える。

エンジオイル、OEM仲間の経営塾より

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『雑菌主義宣言!』

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明治大学教授、齋藤孝

このシビアな時代を生き抜くのにもっとも必要な力は何か、
それは精神の強さだ。

わが身にふりかかる不愉快な刺激や
わずらわしい事柄などの“雑菌”に対して免疫をつけ、
簡単にはへこたれないメンタル面のタフさをもつ。

自分にとって不愉快な雑菌的なものを拒否し、
排除して生きるのでなく、
あえて積極果敢に自分の中に取り込んで、
自己免疫力を高める。
そのような“心の免疫力”を、今から習慣づけよう。
これを私は“雑菌主義”と名づけたい。

大学生を教えていてしばしば感じるのは、
純粋であること、感じやすく傷つきやすいこと、
ナイーブであることを美徳のように思って、
今の自分を守ろうとする人が多いことだ。

面倒くさいこと、わずらわしいこと、理解しにくいこと…
自分にとって不愉快な刺激となるあらゆる物事を、
極力避けようとする。
そのために物事の判断を間違えやすい。

本当にすべきことではなく、
楽な方、より不快でない方を選んでしまうばかりに、
結果として不利益を被っていることがしばしばある。

善悪の判断が誤っているというよりも、
経験値の乏しさを感じることが非常に多い。

私自身、20歳前後の頃を振り返ってみると、
やはり経験も心の耐性も足りなかった。

あの当時の自分と今の自分とのあいだで
何がもっとも変化したのか。
エネルギーでいえば20歳頃のほうが
はるかにエネルギッシュだった。
しかし人間としての強さでいえば、
今の私のほうが何倍もタフだ。

あの頃よりも今のほうが
はるかに多い量のさまざまなストレスや壁にぶち当たっている。
にもかかわらず、日常的にこなせている。

自分自身で心の安定感をコントロールできている自信がある。
20有余年の間にいろいろな経験を積み、自己免疫力がついた。
それらが抗体となっていて、対応が速やかにできるからである。

現代日本人は、菌の繁殖に非常に神経質だ。
巷で流行っている抗菌・除菌グッズの豊富さをみても
それはよくわかる。

近年、アレルギーの症状を抱える人の数が
たいへん増えているそうだが、
親が神経質になりすぎて、
赤ちゃんのときに
細菌を極力排した
クリーンな環境で育っていると、
かえってアレルギー体質になりやすいともいわれる。

人間も、置かれた環境下で自己免疫力を高めながら
生きていくことがもっとも自然で望ましい。

微生物などいてほしくないと思うところにいるのが
「雑菌」であるとするならば、
私たちの日常生活には、「こんな厄介なこと、
不愉快なことは起きないでほしい」と
願うようなことばかりだ。
社会で生きていくことそのものが、
いわば雑菌生活なのだ。

だが、自分にとって厄介でわずらわしくて
不愉快なことから学ぶものは実に多い。
そもそも、仕事というのはわずらわしさの連続だ。

種々さまざまなわずらわしさが、
わらわらとふりかかってくるが、
それを無視するわけにはいかない。
その雑菌に慣れることで、仕事ができるようになっていき、
人間として成熟していく。

成熟するとは、資格試験に通って
次のステージにレベルアップする、といった
分かり易いものではなく、
地道な抵抗力の蓄積によって培われる。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『人間というもの』

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司馬遼太郎

「豊臣秀吉も徳川家康も、だまっていても
どこか愛嬌のある男だった。

明智光秀は智謀こそ
そのふたりよりすぐれていたかもしれないが、
人に慕い寄られる愛嬌がなかったために天下をとれなかった。

英雄とは、そうしたものだ。
たとえ悪事を働いても、それがかえって愛嬌に受けとられ、
ますます人気のたつ男が、英雄というものだ。

竜馬にはそういうところがある。
ああいう男とけんかするのは、するほうが馬鹿だし、
仕損(しぞん)さ」

「竜馬は英雄ですか」
「においはあるな」
「しかし、かれは学問はありませぬ」
「もろこしの項羽は、
文字は名を記するに足る、と言った。

英雄の資質があれば、それで十分さ。
書物などは学者に読ませておいて
ときどき話させ、よいと思えば
それを大勇猛心をもって実行するのが英雄だ。
なまじい学問などをやりすぎれば、英雄がしなびてくる」

竜馬も、ニコニコした。
その笑顔が、ひどく愛嬌があり、
(おお、みごとな男じゃ)と西郷は思った。

漢(おとこ)は愛嬌こそ大事だと西郷は思っている。
鈴虫が草の露を慕うように
万人がその愛嬌に慕い寄り、
いつのまにか人を動かし世を動かし、大事をなすにいたる、
と西郷はおもっている。

もっとも、西郷の哲学では、愛嬌とは女の愛嬌ではない。
無欲と至誠からにじみ出る分泌液だとおもっている。

《竜馬がゆく》より

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『ひとついのち』

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大敬先生

本屋に行くと、よく『楽しく、ワクワク…』とか、
『プラス思考で…』などといった本が沢山ならんでいますね。

もちろん、けっこうなことで、それでいいのですが、
何となく気になるのは、
楽しさとか苦しさとかに対する理解が、
とても浅いんではないかと思うんです。

お釈迦さまは、私たちの、今、住んでいる世界を
シャバ世界とおっしゃいました。
このシャバという言葉は、『苦しみに耐える』という
意味なのです。
ですから、この世で生きることは、
基本的には苦しいことなんです。

ある本には、『人生の目標は、生きること、生き切ることだ』とありました。
とにかく、死ぬまで、どんな事があっても
途中でリタイアしてしまわないで生き切った。
それだけで、その人の人生の意義があったんだというのです。
それは、その通りだと思いますね。

この世で生きてゆくということは、
それほど大変なことなんだと思います。

皆さんも、どんな生き方を、
これまでやってこられたとしても、
とにかく、ここまでは生き切って来られたのですからね、
人生の意味があったんです。
その事で、自分自身を『よくやったね』と、
ほめてあげて下さい。

自分を認め、許し、ほめてあげられるようになって、
はじめて人を認め、許し、ほめてあげられるようになります。

人生はお釈迦さまがおっしゃるように、
基本的には苦しみなんだけれど、そうと知って、
その苦しみの只中に、覚悟を決めて入ってゆきましたら、
意外にも、その苦しみの固まりがほぐれてきて、
その中から喜びの種が見い出されてくるのですね。
そして、その種をしっかり保護して、
大きく成長させてゆくのです。
そこまでいってはじめて「楽しく、ワクワク…」と言えますね。

お釈迦さまも八十歳をこえても、インド中を放浪してまわり、
教えを説かれていたのです。
お経にも、すっかり疲労して、ヨボヨボ歩いておられた様子が
記録されています。

「アナンダよ、私はもう齢(よわい)八十をこえて、
すっかり弱ってしまった。
肉体はすり減って思うように働いてくれなくなった。
何度も何度も休みを与えぬと、
仲々思い通りに働いてくれない。
アナンダよ、私は疲れた。
少し休みたい。しばらく横になろう」と、
こうおっしゃって衣を道傍に広げさせて、
その上で何度も何度もお休みになったのです。

おなくなりになったのも、
道傍に敷かれた衣の上でだったのです。
お釈迦さまも、決して楽ではなかったのですね。
それでも、そんな苦労の中に喜びを見いだしつつ
生きてゆかれたのです。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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ダメなときほど言葉を磨こう

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萩本欽一

僕はこれまでコメディアンとして、たくさんの舞台に立ち、
そしてさまざまなテレビ番組をつくってきました。
いいときもあったし、何をしてもダメなときもありました。
そうした中で、僕なりの「運」の法則を見つけたのです。

それは、とてもシンプルな考え方で、
どん底のときには大きな運がたまり、
反対に、絶頂のときには不運の種がまかれている
というものです。
たったこれだけのことですが、
どんなに辛いことがあっても、
今に大きな運がやってくると信じて努力することができました。

僕には「運」だけでなく
それと同じくらい大事にしてきたことがあります。
それが、「言葉」です。

いい言葉を聞くと、とてもうれしくなります。
同様に、自分がいい言葉を話すと、
周りの人もうれしくなって、いい気分になります。
そうやっていい循環が生まれて、
いい運がやってくると思うのです。

だから僕は、いつも発する言葉一つひとつを
大切にしたいと思っています。
いくら努力をしても、自分に風が吹かないときは必ずあります。
何をしても裏目に出て、うまくいかないときもあるでしょう。

ダメなときでも、言葉を磨くことで、
いい運を引き寄せることができます。
何も話し方を変えるというのではありません。
ほんのちょっとした心がけでできることです。

たとえば、「その服、お似合いですね」と言われて、
つい「いえいえ…」と謙遜してしまうところを、
「うれしい。ありがとう!」と言ってみる。
たったそれだけのことで、
褒めてくれた相手までいい気分になり、
関係も深まると思うのです。

人生とは言葉の積み重ねです。
その都度、どんな言葉を話すかで、
終着点も大きく変わると思います。
そんな言葉の力に目を向けてみると、
毎日の生活も、もっと輝いて見えるんじゃないかな。

いい言葉には、幸運を手繰り寄せたり、
人生を好転させる力があります。
仕事で大成功する人、磁石のように
周囲の人間を惹きつける人は、揃って言葉遣いの名手です。

日本テレビ系の『世界の果てまでイッテQ!』という
人気番組があります。
この番組が始まる前、担当ディレクターが僕に聞いてきました。
「どんなことに気を配れば番組が当たりますか?」と。

僕は、「ヒントは『遠い』と『辛い』だ」と
だけ言いました。
すると、そのディレクターはそれを見事に実現しました。

『イッテQ!』は、タレントが遠くまで行って
辛いことをこなしてくるという実にシンプルな番組です。
それがヒットにつながったと思います。

テレビの現場は常に慌ただしいものです。
だから、ともすると「近くて」「楽な」方法で
番組をつくりがちです。
これはテレビの番組に限った話ではありません。

何か迷ったら、自分にとって
物理的な距離や心理的なハードルがあったり、
これはちょっと大変かなという方を選ぶ。
そこにいい物語が生まれ、人生を豊かにしてくれるのです。

『テレビで一緒に番組を作っていた仲間が、
とてもいい話をしてくれました。

ある朝、ドッタン、バッタンという大音響で
目を覚ました人がいました。
マンションの下で、何かの工事が始まったらしい。
事前の知らせもなく、朝8時からけたたましい音を立てられて、
文句を言いに行こうと起きあがりました。

「“朝っぱらからうるさいな!せめて10時からにしてくれ!”と
言おうと思ったんだけど、途中で気が変わった。
欽ちゃんだったら、こういう時どうするかな、と考えて、
欽ちゃんがしそうなことをしてみたんだよ」と。

すると彼は、工事をしていたおじさんに「大変だね」と
声をかけ、缶ジュースを1本差し入れたそうです。
「そうしたら工事をしていたおじさんが
“すみません、うるさいでしょうね”と言うので、
思わず“いやいや…”と言っちゃった。

不思議だね、次の日も工事の音で目覚めたのに、
音がそんなに気にならなくなっていた。
それに、時計を見たら9時でね、
おじさんも気をつかって開始時間を遅くしてくれたみたい」

やせ我慢でもいいから優しい言葉をかけてみる。
すると、お互いに気遣いが生まれて、
いい方へ状況が変わっていくんですね』

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『町工場の全社員が年収600万円以上もらえる理由』

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吉原博

当時のニューコアには、いくつかの神話がありました。

・ニューコアの社員7000人は、鉄鋼業界でいちばんの高給取り。
 にもかかわらず、生産された鋼材1トン当たりの人件費は最低
・本社勤務の社員はたった22人
・レイオフなし、工場閉鎖なし。30年以上、
 すべての営業四半期において黒字決算
・業界最高水準の給与を支払っており、
 人材に不足したことがない

会社というのは、社員のことを考え、合理性を突き詰めると、
極限まで筋肉質になるものです。

私は社員を2つのグループに分け、
それぞれのグループについて、
週に2日ずつ「22時まで残業」「19時まで残業」
「定時で退勤」の日を決めることにしました。
当時はどの会社も月曜日から土曜日まで
週6日勤務でしたから、
たとえば「グループAに所属する社員は
月曜日と水曜日が22時まで、火曜日と金曜日が19時まで、
木曜日と土曜日が定時まで」というように決めました。
グループAとグループBが残業する曜日をずらすことで、
週4日、工場は22時まで稼働させることができます。
一方で、社員は定時で退勤できる日が事前にわかるので、
プライベートの予定を立てやすくなる

「社員の働きやすさを変えずに、
何とか工場の稼働時間を増やして、
受けられる仕事を増やせないか」
そう考えた私が次に導入したのは、「夜間専門社員」です。
つまりグループA、グループBのほかに
夜間専門のグループCを作って3グループ制とし、
グループCの社員が22時から朝まで
機械を稼働させられるようにしたわけです。
こうして、工場の機械はほぼ24時間フル稼働できるように
なりました

週休2日制の中身を見直し、「土・日」または
「日・月」に社員が休めるようにしました

吉原精工ではプライベートには一切タッチせず、
社員同士の親睦を図るイベントなどはありません。
「楽しいことは会社の外で自由にやってほしい」という方針です

大事なのは、「残業代込み」の給料にすること

「利益が上がればボーナスが出る」という
仕組みを導入した結果、
面白い効果も生まれました。
会社の利益を社員が優先して考えるようになり、
ベテラン社員が若手社員の能力を引き上げようと
サポートする姿勢が見られるようになった

壁に張り出す紙には、今の借金の額も載せています

もし残業のある会社で社員に業績の推移を開示する場合は、
残業代も公開すべきだ

吉原精工では、入社1年目から年間20日の有給休暇を
設けています。
20日間の有給休暇のうち、14日間は私が割り振ります。
社員は、残り6日間は自由にとることができる仕組みです
有給休暇のうち14日間を私が割り振るのは、
ゴールデンウィーク、お盆、年末年始に
それぞれ10連休をつくるためです

社員全員に「部長」という肩書のついた名刺を
持たせています。
ただし、「部長」の名前はプライベート用です

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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