記憶に残る話し方

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「新実践コミュニケーション改革」から。

「誤解を解くとすごくいい」」
ギャップがより印象を強くする。

江戸時代。仙がい(せんがい)という禅僧が
寺の檀家の新築祝いに招かれ
主から新築祝いの書を頼まれ書いた。

「親死子死孫死(親が死に、子が死に、孫が死ぬ)」
檀家はめでたい席になんてことを書くのだと怒ったが、
仙がいがその意味を説明すると
今度は大いに喜んで家宝にした。

「何を誤解しているのか。こんなめでたい書はないぞ。
親が先に死んで、その後に子が死んで
そして孫が死ぬ。こうして順番を守ることで家が栄える。
この順番が逆だったらどうなるか。
こんな不幸なことはない。」

円滑なコミュニケーションという点からは
適切かどうかは分からない。
こんな意地悪な書き方でなくとも
「親の後を子が継ぎ、子の後は孫が継ぐ」でも十分だ。
ただ、ここに仙がいの並外れたコミュニケーション術がある。

相手の想定範囲でのコミュニケーションは円滑。
でも、想定の範囲を超えると
コミュニケーションに摩擦が起き始める。
仙がいのやり方は冒頭から相手の想定範囲を大幅に超えることで
あえて誤解を生じさせ、相手はその後階に困惑し感情的になる。
そこで誤解を解く。
誤解を解くことで相手は緊張から解放され
快感を生むドーパミンが脳内に放出され、
喜びがその分大きくなる。
これを「誤解話法」という。
誤解話法にはもう一つの特徴がある。
記憶に強く残るということだ。

小説や映画で悪党が善人に心を入れ替える。
そうするとその元悪党を必要以上に
善人に認識してしまう。
これが「逆バイアスの効能」。
逆バイアスは心に深く刻み込まれ
それが記憶に強く残るという現象を生み出す。

さて仙がい。仙がいの画はとても人気があり、
客が真っ白な紙を持参して絵を頼みに来た。
「うらめしや わがかくれ家は雪隠(せっちん)か 
来る人ごとに紙おいてゆく」
雪隠はトイレのこと。
仙がいのユーモアのセンスもたいしたものですね。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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