『プラチナタウン』

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楡周平
伊吹文明・元衆議院議長が石破茂・地方創生大臣に勧めた本。
「石破くん、君、楡周平さんの小説『プラチナタウン』を読んだかい?」
「読んでおりません」
「地方創生大臣なら読まなきゃあダメだよ」

主人公は、総合商社・四井商事の部長、山崎鉄郎。ひょんなことから出世コースを外された山崎が、故郷緑原町の町長を引き受けることから、物語は転がり始めます。

150億円もの負債を抱えた地方自治体の再生に、元商社マンが挑む──。
要は金が出て行くだけで、収益が上がらない公共事業に湯水のように金を使った。その結果残ったのが150億もの負債ってわけだ

総合商社が世界中に支社、あるいは駐在員事務所を置いているのは、単に新しい商売を拾うためばかりではない。生の情報をいち早く掴む。それが利益を上げることに直結しているからだ

もう少しすれば団塊の世代が定年を迎えんだろう。あの世代はいろいろな意味で従来の日本人のライフスタイルを変えてきたんだが、その最たるものは核家族化を日本社会に完全に定着させた最初の集団ってとこなんだな。
つまり、生まれ育った故郷を離れ都会に職を求める傾向が顕著になったのもあの世代なら、独立した子供と親が離れて暮らすというライフスタイルが定着したのもあの世代なんだよ

山崎、受けろよその話。俺たちゃ世界を相手に切った張ったの商売をしてきたんだ。そこで培ったノウハウを生かせば、赤字に転じた地方の町の財政を建て直すくらいのプランは必ず思いつく。地べたを這いつくばって商売を拾ってくんのが商社マンだろ

町長の仕事は、駄目で元々、少しでもプラスに転じれば町の再生のきっかけとなり、ひいては住民の生活の安定に繋がる。
考えてみれば、そちらの方がよほど夢があり、少しは人の役に立てる人生を過ごせるような気がするし、それが貧乏くじを引いたことになるのかどうかは、自分の能力次第というものだ

お前らには、根本的に欠如しているものがある。金を使うことに頭は回っても、金を稼ぐ苦しさ、事業をやることの怖さを知らない。金は黙っていて入ってくるもんじゃねえ。死に物狂いで、命がけで稼いでくるもんだ

これからの時代、言葉は悪いですけど、年寄りは金を生む貴重な財産になるんですよ

真の公共事業とは、一時のカンフル剤であってはならない。恒久的に利益を生み、雇用を確保するものでなければならない

同じ広さ、同じクオリティの物件に住むなら、安いに越したことはねえ。そう考える人間が圧倒的多数を占める時代が来ると思わねえか
名より実を取る方が賢い生き方だと分かっていても、世間体を気にするのが人間だ。
乞うて行くより、乞われて行く方が、与えられるチャンスが多いと分かっていても、なかなかそうはできないのも人間である

主人公が安定した大企業にしがみつくのをやめ、地方創生に挑むあたりが、今の時代を象徴しています。
要はどちらの道に自分の可能性、生き甲斐を見出せるかという問題なのだ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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