チャンスは日陰にある

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楠木建

従来の模倣障壁に替わる持続的な差別化の理論は、
「日向対日陰」が、その手掛かりになる。
何時の時代も、その時々の旬の事業機会がある。
その時点で脚光を浴びている日向を、
ストレートに攻めるよりも、
日差しが作る日陰に身を置く商売にこそ妙味がある。

19世紀のゴールドラッシュの時代。
「金鉱を掘るよりも、ジーンズを売れ」は
日陰戦略の古典的な例だ。
一獲千金を夢見た人々が、カリフォルニアに殺到した。
やがて、金は尽きてしまった。
安定して利益を得たのは、押し寄せる金鉱堀りに
ジーンズなどの生活必需品を売った商人だった。

日陰戦略の美点は、競合に対する障壁や防御を
必要としない事だ。
敵が「やりたいけれど、できない」のではない。
そもそも「やる気が起こらない」のである。
ライバルとの直接競争の忌避、ここに競争優位の鍵がある。

日陰には、ユニークな価値を創造する可能性がある。
あらゆる顧客価値の本質は、問題解決にある。
日向戦略は新しい技術や市場の機会をとらえて、
顧客の問題を解決しようとする。
しかし、問題解決は、常に新しい問題を生み出す。

何時まで経っても、全ての問題が解決されず、
絶えず新しいニーズが出て来る理由が此処にある。
対して、日陰戦略は「問題が生み出した、解決した問題」に
軸足を置ける。

成熟した競争市場にあって、
目先のキラキラした収益機会を追いかける
手なりの経営では、持続的な差別化はおぼつかない。
商機と勝機は日陰にある。

日向にある機会の争奪戦は大企業に任せて、
中小企業は日陰の問題解決に注力すべきだ。

エンジエオイル、OEM仲間の経営塾より

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