『捨てちゃえ、捨てちゃえ』

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ひろさちや

こんな仏教説話がある…。狩猟を趣味とする王さまがいた。政務のあいだをぬって、よく狩猟に出かける。一方、この王さまは仏教の信心に厚い。日ごろから仏教教団に布施し、しばしば聖地への巡礼もする。

この王さまを家臣たちは笑う。仏教の禁じる殺生(せっしょう)をさんざんやっておいて、聖地巡拝(じゅんぱい)はおかしいではないか…という訳だ。
その家臣たちの声が王さまの耳に入った。王さまは家臣を集めて話す。「ここに大きな鍋があって、湯がぐらぐら沸きたっている。中に金塊が入っているが、おまえたちはその金塊を取り出せるか」「できません。火傷(やけど)します」「しかし、わしにはできる。どうするかといえば、冷水をそそいでやるといいのだ。そうすると、熱湯もさめて、手を入れても火傷をしない」
さらに王さまは続ける。「わしは国王であって、武人である。狩猟は武人にとって大事な鍛錬だからやめるわけにはいかん。そこでわしは、罪をつくった熱湯をさますために、聖地への巡拝をするのだ」

わたしたちの職業も同じである。われわれが職業に専念すればするほど、悪行をつくり、他人に迷惑をかけることがある。大事なことは、そのとき、生きていくためにはやむをえないと開き直らずに、素直に「すまない」と詫(わ)びる気持ちを持ち、反面において少しでも宗教心を持つことだ。
ほんの少しでも熱湯の温度を下げるようにすればいいのである。そうすれば、「ほとけ心」という金塊が得られるであろう。

エンジンオイル、OEMの仲間の経営塾より

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