『他人の協力を得る』

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樺旦純

運は誰のもとにも訪れる。しかし、どんな人にも、同じだけの運がめぐってくるわけではない。その人の素養、能力、人柄によって、訪れる運も違う。大きな運をつかむには、それをつかむだけのものを身につけていなければならないのである。

一つの目標を達成するためには、他人の協力も必要になってくる。その場合、相手にも何かメリットがあれば、協力を得やすい。具体的に、どうすれば人は動くのか。一般に、人が持つ影響力は、次の6つのパワーに分類される。このうち、どれか一つでも持っていれば、相手が自分のために動いてくれる可能性は高い。1. 正当性パワー相手を従わせる役割や地位、権限などを持つ。父母と子供、教師と生徒、上司と部下といった関係。部下が従うのは、相手が自分の上司で、命令を与える権限を持っているからである。
2. 情報性パワー相手の求める情報を持っている。いわゆる情報通の人は、あちこちで重宝がられる。人々にとっての価値のある情報を入手できる能力を持つ人は、それだけでも一つの影響力となる。
3. 報酬性パワー一方が他方に、報酬(金銭的・心理的)を与える権限を持つ。経営者と社員の関係など。報酬には賞与、高い評価、ほめることなども含まれる。
4.懲罰性パワー相手が指示や命令に従わない時は叱責したり、懲罰を与える権限を持つ。軍隊でいう教官(教師)と隊員(生徒)の関係など。
5.専門性パワー専門的な知識や技能、経験を持つ。
6.準拠性パワー人間的魅力、人柄のいい人や周囲から好かれている人は、いざという時、人々の協力を得られる。

急速に変化する時代では、やはり新しい情報に詳しい人は何かと便利だ。また、専門的な知識や技能、経験を持っていれば、周囲から一目置かれる存在となり、尊敬・信頼を寄せられる。人柄については言うまでもないだろう。
人を動かすには、相手に対して何らかの影響力を持つこと。すなわち、相手にとっても、協力することで何かプラスになるようなものを身につけていることが必要なのだ。

■稲盛和夫(「成功」と「失敗」の法則)より
『企業経営において、長く繁栄を続ける企業をつくりあげていこうとするなら、「徳」で治めていくしか道はないと私は考えています。欧米の多くの企業では一般に、覇道つまり「力」による企業統治を進めています。資本の論理をもって人事権や任命権をふりかざしたり、または金銭的なインセンティブ(誘因)をもって、従業員をコントロールしようとしたりするのです。しかし、権力によって人間を管理し、または金銭によって人間の欲望をそそるような経営が、長続きするはずはありません。一時的に成功を収めることができたとしても、いつか人心の離反を招き、必ず破滅に至るはずです』
会社のトップや上司、親や教師ならみな持っている、「正当性パワー」や「報酬性パワー」や「懲罰性パワー」には封印をして、「準拠性パワー」で勝負した方がいい。準拠性パワーは「徳」という東洋学的にいう、人間的魅力。パワーがありながらも、それを使わずに治めていく何らかの影響力のことだ。
徳とは、相対したとき、自然と頭が下がるような人のことをいう。利他の心を持ち、けっして偉ぶらず、謙虚で、明るくて、人から好かれる人のことだ。昨今では、その「徳」に「情報性パワー」や「専門性パワー」があると、さらに影響力が増す。それが…他人の協力を結集できる人であり、影響力のある人。

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