長期成長を考える

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中山淳史

最近の米上場企業のCEOの退任は、5分の1が解任によるものだ。リーマン・ショック以降も、短期主義の勢いは強まっている。経営者は、回転ドアの様に目まぐるしく入退場を迫られるのを怖れ、短期主義に擦り寄る。短期主義の経営と、それに抗いつつ持続的成長を追求する長期経営は、どちらが企業価値を上げるのか。企業の視野・展望の長短を測る「コーポレート・ホライズン」という指数で米上場のグローバル企業615社を長期経営か短期経営かで分けてみた。

2001年から14年までに長期経営企業が増やした売上高は、1社平均で1.1兆円を超えている。これは、短期企業を47%上回っており、利益の平均でも、長期企業が36%大きかった。長期経営に優れた企業ほど、実はベンチャー企業並みに機敏で大胆。資本や人材の配分も上手い。

GEの大規模な事業の売買は、一見すると短期主義的な企業行動に見えるが数十年先を見据えた長期ビジョンを土台にしている。米デュポンは「100年委員会」、独シーメンスは「メガトレンド」、スイスのネスレは「ニューリアリティー」と呼ぶ会議体を持つ。未来の世界情勢やマクロ経済、人口動態、技術の進歩などについて話し合う場だ。そこで示された予測やビジョンを経営上層部で共有する習慣、風土が定着している。新しいトレンドを探り、それが本流になると判断したら大胆に舵を切る。

日本企業は、長期経営のイメージが在るが、多くは3年か5年の中期計画を作るだけ。しかも、6割は未達に終わっている。
経営者の多くは、そうした計画を任期中に1、2回策定し、辞めれば後任社長が、また別の計画を作り直す。日本の100年企業は2万社を超えているが、金融機関を始め、規制に守られた長寿も多い。
技術の陳腐化や新興企業の台頭が、あっという間に現実となる昨今。超長期の視点で自己変革できているかどうかが問われているのは、むしろ日本企業だ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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