私のリーダー論

Pocket

竹内康雄

リーダーは企業の価値を高め、変革する。私がイメージしているリーダー像は何でもかんでも変えることではなく、的確な手を打つ中で企業価値を次々と高めることにある。社員がやる気にならないと企業価値は高まらない。究極的にCEOの役割は社員をやる気にさせること、そして組織を活性化させることです。

オリンパスの規模だと約3万人の社員が世界中にいて、その取引先も含めて一枚岩になってもらう必要がある。世の中に貢献するという目標に向けて、オーケストラの指揮のようにできれば一番強い。
まず企業理念やパーパス(存在意義)、コアバリューを作りました。どんな事業を提供しているかどうかに関係なく、皆で心を1つするためには、やる気が起こらないとできません。そしてやる気を起こしてもらうには、オリンパスで働きたいという気持ちが必要になる。そのためには、オリンパスにはキャリアを作る中にチャンスがあると明確に示すことが重要です。

複数の事業を抱えることで企業価値が下がるコングロマリット・ディスカウントが指摘されていた。
オリンパスは技術発で成り立っている会社のため、事業同士にあまり関連性が無い。一つ一つの事業はしっかりしているので強いが、コーポレートマネジメントとして事業の価値を高める活動をやってこなかった。その結果、オリンパスはサイロ(縦割りの組織)が強くなってしまい、お互いの事業が独立して助け合うことも、お互いを知ることもなかった。販売ネットワークもともかくバラバラだった。全体を考えることが大切だというのは頭で分かっていても、個別最適が大事だと現場は主張する。その姿はグローバル企業のイメージとはかなり違っていた。最大公約数のように理念が作られていた。こうしたオリンパスの課題を何とかしなくてはいけない、とずっと考えていた。

自分自身が経営側に回ったので、あえて逃げられないようにしました。自分にも会社にも高い目標を設けた。日本流の企業統治(コーポレートガギナンス)では、逃げ道をいっぱい作っている。オリンパスもかつてはそんな状態で不正を隠してしまったことで、みんなに迷惑をかけてしまった。
まず経営戦略で営業利益20%という高い目標を設定しました。そのうえで米運用会社バリューアクト・キャピタル出身のロバート・ヘイル氏を社外取締役に迎えました。会社のガバナンスを指名委員会設置会社にし、取締役の多様性を高めた。社外取締役が増えたことで、執行側にとって、ハードルも高くなった。

デジタルカメラなどの映像事業を売却し、選択と集中を進めてきた。
あのまま映像事業がオリンパスの中にあっても、たぶん事業として潰れていただろう。だから、事業としして生きている間に切り離して別の道を行ってもらう。事業の価値を高め、存続してもらうことが重要と判断して実行した。
こうした手を考えてきたことで、医療事業を強化する戦略が、より明確になりグローバル・メドテックカンパニーになると宣言することができた。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

Pocket