『大量生産品のデザイン論』

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グラフィックデザイナー佐藤卓

パッケージデザインの判断指標は以下の3つ。

・「価値(バリュー)」を伝える
・「印象(インプレッション)」を現す
・「知覚(シズル感)」を誘う

大量生産品のデザインは
それ単体としての「デザイン」の存在だけでは
機能しない(評価し得ない)。
販売チャネル、幾多の売り場を経由して、
そこに陳列されてこそ機能する(評価される)ことになる

本当は、パッケージデザインの良し悪しだけで
商品を売ることはできないのです。
つまり商品にはもともと価値があって、
その価値や魅力がきちんと表現されているデザインであれば、
自ずと売れるはずです

一つ気がついたのは、
クールミントガムの正面性についてです。
従来のパッケージでは、天面と側面に
ほとんど同じ要素が入っていました。
これは発売当初はパッケージされている枚数が
少なかったため、商品の正面と言えるのは、
ガムの幅にあたる天面だけだったことに由来しています
パッケージをよくよく眺めていると、
この天面と側面のデザインがほとんど同じくらい、
視界に入ってくることに気づきました。
つまりクールミントガムの正面は、天面と側面の二面、
斜めから見た角度だったのです。
このことに気がつくと、俄然自由になりました。
今までの二倍の広さでデザインを考えればいいからです
側面に5体のペンギンを並べました。
しかも右から2番目のペンギンにだけは、手を挙げさせて…。

今までのファンというのは、
まさにメーカーにとっての財産です。
そんなファンにどれくらいの変化までは許容してもらえるか。
それと同時に、
新しくなったことへの嬉しさや楽しさを感じてもらえるか。
その許容値を探ることが、リニューアルにとっては大切なこと

キシリトールの特徴は、
何となんといっても「歯に良い」ということにあります。
そこでこの時は、歯磨き粉や歯ブラシといった、
デンタル用品のイメージからデザインを構成することを
すぐに思いつきました。
そこからは「デンタル」というイメージが
ガムという食品になじむような調整を
行っていけばよいわけです。
そしてシンボルマークになったのは奥歯を真上から見たところ

「そのまま」というキーワードが誕生したことによって、
みんなが共有できる「軸」ができたのです。
この時に身を以て体験したのは
「言語が明快になるとデザインも定まる」ということです

細かいことですが、青に変更した際には、
白い地色と青い色を敷いたその境界に細い線を入れました。
この線を入れることで、
丁寧につくられているという印象がグッと高まるのです。
またこの細い線は、店頭に置かれた時に、
遠くからは見えませんが、近づくと見えてくる。
つまり、距離によって情報が変化するのです。
それは、パッケージの正面、「おいしい牛乳」という
ロゴのベースに、白い牛乳が注がれているグラスの写真が
敷かれているヴィジュアルも同じです。
遠くからは単に白い地色に見えますが、
近づけばグラスがあることがわかる

「商品の魅力をどう伝えるか」はビジネスにとって一大事。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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