『下方比較の法則』

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内藤誼人

いろいろな心配を抱えすぎると、ツキが逃げてしまう。しかし、心配症な人に向かって、「心配しすぎないほうがいいよ」とアドバイスしても、実は、それほど効果はない。それと同じく、後悔しがちな人に向かって、「さっさと忘れるんだよ」とアドバイスしても、なかなか実行することはできない。
なぜなら、当人自身も心配症や後悔しがちな性格を直そうと努めてはいるから。心配しすぎないように、後悔しないようにとはするものの、なかなかできないからこそ、彼らは悩んでいる。

そこで、日常の些細な出来事で思い煩ないようにするための、ひとつの心理技術を教えます。それは、「もっと悲惨な人」に目を向ける、という方法です。
世のなかには、探せば、あなたよりもずっと悲惨な人がいるはずです。そういう人に目を向けると、自分の方がはるかにマシだということに気づき、胸をなでおろせることが分かっている。
「俺はプロジェクトで失敗したけど、クビにならないだけマシだ」
「俺は営業成績が全然よくないけど、降格された〇〇さんに比べたら、ずっとマシだ」
「ベンチャーの経営に失敗して自殺した人に比べたら、生命があるだけマシだ」「子どもが素直に育ってくれているだけ、家族崩壊している人よりマシだ」

このように、自分よりももっと悪い状況に陥っている人に目を向けると、つまらないことで悩んでいる自分が小さい存在であることに気づく。このテクニックは、心理学でいう、“下方比較の法則”に基づいています。
自分よりもツイていたり、成功している人と自分を比較すると、自分のことがイヤになってしまうのですが、逆の人と比較すると、なんとなく晴れやかな気分になれる。

アメリカの心理学者トーマス・ウィルズは、「自分よりもっと悲惨な人と比べるのは、自信を取り戻す上でも有効な方法だ」とさえ述べている。
落ち込んでしまったり、後悔ばかりしているときは、自分よりも、もっと悲惨な状況にある人のことを考えてください。そうすると、より客観的に自分の立場を判断できるようになり、結果として、後悔しないでするようになる。
くれぐれも、成功者やお金持ちと自分を比較しすぎないようにしましょう。比較すると、自分がつまらない存在に思えて、ガッカリするのがオチです。比較するなら、自分より惨めな状況にある人にして下さい。それが、心理学的にも、気持ちを落ち着かせるいい方法なのです。

究極の比較は、生きるか死ぬか。どんな心配ごとや嫌なことでも、死ぬこととくらべたら大したことはない。生きてさえいれば、何とかなる可能性は必ずあるのだから。
だからこそ、「生きているだけでありがたい」。身近な人が亡くなったときや、自分が大病や大きな事故をしたとき、多くの人は「生きているだけでありがたい」と感じる。しかしながら、往々にして、普段はそのありがたさを忘れてしまっている。

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