人への投資

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 翁百合、日本総合研究所理事長

気候変動や格差拡大などの社会的課題を解決しつつ長期的に企業価値の向上に取り組まねばならない。
格差問題では従業員が、気候変動問題では子供たち未来世代がステークホルダーとなる。今後の企業経営では、株主だけでなく、多様なステークホルダーへの目線も考える必要がある。

グリーン投資や人への投資を含む無形資産投資が一層重要になってくる。中でもキーとなるのは、人への投資だ。画期的なイノベーションを起こす人材を育成する高等教育が特に大切で、これは大学に求められる。民間企業にはリカレント教育やリスキル教育が期待されている。

積極的労働政策が何よりも重要だ。失業者や起業に失敗した人が再就職のための研修や教育を受けられる制度だ。これは単なる一時的な金銭的支援に終わらず、より良い仕事への就職も支援する制度だ。
日本はしっかりと積極的労働政策を打ち出し、人を支えながら、将来性のある新産業にシフトさせていかねばならない。

人への投資を行う企業には優秀な人材が集まるという好循環が生まれる。このため、機関投資家は将来性を判断するデータとして起業の人材育成に注目している。
つまり、企業の無形資産投資は、企業価値の向上+社会的課題の解決という一石二鳥の経営戦略だ。企業は人件費をコストと考えがちだが、人への投資と捉え直してほしい。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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