『かくて行動経済学は生まれり』

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マイケル・ルイス

「人間の直感は間違う」

野球選手の市場は非効率なことで溢れている。
それはなぜなのか?
アスレチックスのフロントは
市場における“バイアス”について語っていた。
たとえば足の速さが必要以上に評価されるのは、
それが目に見えやすいからだし、
選球眼があまり評価されないのは、
四球がすぐに忘れられるからだ
四球を選んでも、ただ立っていただけだと思われる

ものごとがうまくいかないとき、
人は過去に成功したときの習慣に戻る

何であれ、先入観で選手を選ぶと、
たとえ害があってもそれに固執しがちだ。
先入観を正当化しようとするからだ。
さらに悪いことに、
スカウトたちは自分の若い頃を思わせる選手をひいきする

モーリーはこのとき、行動経済学者が
“保有効果”と名付けたバイアスを知った。
保有効果に対抗するため、彼はスカウトと自分のモデルに、
目をつけた選手それぞれの評価基準をきちんと決めさせてから、
ドラフトに臨むことにした

ダニエル・カーネマンが信じていないものは数多くあるが、
その中でもっとも興味深いのは「自分自身の記憶」である

大きな選択は、実際はでたらめだ。
小さな選択を見た方が、その人がどういう人間か分かるだろう

いくつかの選択肢があるとき、合理的な人間は
自分の好みに従って、論理的に順序をつけられる。
たとえばメニューを渡されて、
そこに三種類のホットドリンクがあったとする。
そしてその人が以前、ココアよりも紅茶、紅茶よりも
コーヒーが好きだと言っていたら、
論理的にはココアよりもコーヒーが好きな筈と考えられる。
もしCよりB、BよりAが好きならば、
CよりAが好きだろう、と。
学術用語ではこれを“推移的”であるという

簡単に思い浮かべられる、つまり利用可能である状況ほど、
起こる頻度は高いと感じてしまう。
特に強烈な事実や出来事、あるいは起きたばかりのことや
誰もがよく知ることは、
しばしばとても簡単に思い出せるため、
判断を下すさいには、実際より重要視されてしまう

私たちの頭はステレオタイプによって惑わされる

手術が成功する可能性は90%と告げると、
82%の患者が手術を選ぶ。
しかし手術で死ぬ可能性が10%あると説明すると、
手術を選ぶ人の割合は54%まで下がってしまう

エンジエオイル、OEM仲間の経営塾より

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