空気を読む

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ロバート・キャンベル、国文学研究資料館館長

山本七平「空気の研究」
空気は、一つの絶対の権威の如くに至る所に顔を出して、驚くべき力を振るっていた。人ではなく、いろんな場面で空気が最終決定者になっている。
日本の作家は、昔から雲が大好きだ。
幸田露伴の「雲のいろいろ」は、雲の種類から、好い雲に出会えるコツや場所まで教えてくれる優雅な雲案内になっている。

江戸時代の儒学者も、折々に書生たちを塾から連れ出し、山に連れて行ったものである。高い所から雲が変幻自在に形を変えるのを見て、思い思いのイメージで作文する事も多かったという。
一緒に同じ雲を見上げながら、側の人とは、まるで違う形を想像し、最後に文章を読み上げ共有するという遊びにも似た学習法があった。

「空気が読めない」人は、どちらかと言えば、一片の雲を、皆と同じ格好として思い描き、表現する事をしない。あるいは、出来ない人の事を言う。
忙しい日々に、その場の雰囲気に浸り、自分を同調するスキルも必要かもしれないが、勿体ないような気がする。
昔の人は、その雲を見ながら、恵の雨をもたらす雲か、それとも空しく雲散霧消するものかを同時に考えていたはずである。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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