『宇宙ビジネスの衝撃』

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大貫美鈴

この宇宙ビジネス市場は現在、着実に伸びており、2005年に17兆円だった「スペース・エコノミー」は、2016年には33兆円にまで拡大しているそうです。さらに興味深いのは、このうち各国の宇宙予算、従来の公的なマーケットが25%に満たなくなってきたということ。つまり、民間の商業によるサービスやプロダクトが伸びているのです。

IT関連の技術や資金が流れているのは、宇宙をインターネットの延長として見ているからです。宇宙にネットワークを張り巡らせることで、「地球のビッグデータ」が手に入る。これが、さまざまなビジネスを生み出すと期待されているのです
あるショッピングモールの駐車場に停まっている車の数を、時系列で分析することができる。植えられた作物の生育状況を宇宙から把握することができる。牧畜では、牧羊犬に代わって牛を管理することができる。魚群探知機の精度を高めていくことができる……。
こうした情報は商品相場にも影響を与え、投資銀行やヘッジファンドなどの金融機関にとっても望まれるものです

地球を観察することで手に入るビッグデータや通信環境は、今後、IoTやAIの進化と結びついて、製造、サービス、流通、医療、金融、娯楽、教育、農業、漁業、防災などのあり方を激変させ、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています

スペースXのアメリカにおける存在感を知るエピソードに、軍事分野でも急速にシェアを伸ばしていることがあります。アメリカの軍事マーケットは巨大ですが、ハードルが高くて入りにくいのが実情です。しかし、まずライセンスを取得し、軍事衛星の打ち上げ契約を獲得、2017年5月からは打ち上げを始めています。長年、ロッキードやボーイングの独壇場だった領域の切り崩しに成功している
NASAが開発するのではなく、一顧客として民間からサービスを購入するというパラダイムシフトが起きた
地球上の6割は、インターネット接続がスムーズにはできていない。アフリカの奥地や海上もそうですが、いろいろな場所で通信ができないのです。まだ残されている6割を開拓するということ。これは、今なお残された巨大な市場です。それを可能にするものとして大きな注目を浴びているのが、低軌道に打ち上げられる小型衛星

ビル・ゲイツは長年世界の長者番付ナンバーワンだった世界一のお金持ちですが、彼が大きな投資をしているのが、アメリカのベンチャー企業カイメタです。カイメタが手がけているのは、メタマテリアルと呼ばれる人工物質を使った、軽くて薄い衛生向けの平面アンテナの開発です
カイメタには、トヨタ自動車も約6億円を出資。来るべき自動運転の時代に向け、自動車用通信衛星システムに採用するのではないかと注目を浴びています

シアトルは、宇宙に投資をする3大メガエンジェルがいる、アメリカで唯一の都市

今後は宇宙滞在の長期化や商業化にともない、宇宙で快適に過ごしたいというクオリティ・オブ・ライフがさらに充実することでしょう

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