『人はだれでもエンジニア』

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ヘンリー・ペトロスキ

「今はもうエンジニアとデザイナーの時代だよね」Tech系人材マーケットに詳しいプロフェッショナルに聞いたところ、今、エンジニアとデザイナーはどこでも引っ張りだこ。なかでもエンジニアは、法外な給与オファーがもらえ、企業によってはストックオプションまで付く、夢の職業。
シリコンバレーでアプリでも作って創業すれば、一夜で億万長者になることだって可能です。

米デューク大学教授で、土木工学、失敗学などを専門とする、ヘンリー・ペトロスキ氏が、まったくの初心者に向けて、エンジニアリングの要諦を語った。
エンジニアリングを理解する上の核心は、「失敗」この本の議論の中では、機械や構造物が破損することだ。「失敗」を避けることが、エンジニアリングの、第一の、そして最大の目的だからだ。だから、すさまじい大惨事が起こったら、それは、つまるところ設計の失敗である

エンジニアが作る構造物の強度や挙動を予知するというのは、ちょっと考えるほど簡単で、すっきり割り切れる仕事ではない
三びきの子豚は三びきとも、狼に壊されてはならないという構造上の要求は心得ていた。だが、狼の乱暴な力がどのくらい強いかについては、三びきの考えは違っていた
疲労というエンジニアリング上の概念を学生に教えるとき、私はひと箱の紙クリップを教室に持って行く。学生たちの目の前で、一つのクリップを平らに伸ばし、またもとのように曲げる。曲げ伸ばしを繰り返しているうちにクリップは二つに折れる。これが疲労破壊というものだ、と学生たちに教え、何回曲げ伸ばしすればクリップが折れるかは、クリップの強度によるだけでなく、曲げ伸ばしの激しさにもよるのだと言ってきかせる

この壊れ方が私にとって面白かったのは、英語で最も高い頻度で使われる文字と、スティーヴンの「スピーク・アンド・スペル」で疲労破壊を起こしたキイとの間に深い関係があることだった。
「ENTER」キイが最初に折れたのに不思議はない。単語を一つ入力するごとに叩かれるので、どの文字のキイよりも使用回数が多いからだ。英語で最も多く出てくる八つの文字E、T、A、O、I、N、S、Rの順のうちの五つ(E、T、O、S、R)のキイが、最も早く壊れたうちに入っていた

われわれの中には、膝がまず悪くなる人もいるし、まず腰にくる人もいるが、身体中の間接が全部一時にばらばらになる人はいない。そこでホームズは、どこにも弱い繋ぎ目のない馬車を設計しようと考えることの愚かしさを構想したのだった
われわれが作るもの何一つとして、最初の強さを永久に持ち続けるものはない自分が設計しようとする構造物には、重力以外にいかなる力が作用することになるかを、可能なかぎり予想すること

■114人が死亡。米国史上最大の建造物惨事と言われた、カンザス・シティ・ハイアット・リージェンシー・ホテルの事故の説明
簡単な比喩を使ってこの問題のメカニズムを考えてみよう。もとの設計の吊り棒を一本のロープと考え、二層の歩廊は二人の人で、そのロープにつかまっているのだと考えよう。
この二人の体重は、ロープを握っているそれぞれの人の手を通してロープにかかる。もとの設計の歩廊の支持法は、一本の同じロープの上部と下部に、別々に二人の人がつかまっているのと同じである。ロープの強度が十分で、それぞれの人の握る力が十分強ければ、二人ともロープにつかまって落ちずにいることができる。
しかし、もし下の人がつかまっているのが同じロープではなく、上の人の脚に結んである別のロープだとしたら、上の人の握力は二人分、ざっと二倍の体重を支えなければならなくなる。決定的な因子になるのはロープの強度ではなくて、上の人の握力になるのである

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