白い壁が減っている

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国文学研究資料館、館長。ロバート・キャンベル

洋間に白いクロス。日本では普通の事だ。アメリカでは、白い壁が減っている。アメリカでは、賃貸物件でも、住む人が好きな色で部屋の壁を塗装することができる。
最近は、濃くて深い色を選ぶ人が増えているようだ。清潔で飽きが来ない白い壁は、なぜ選ばれなくなったのか。これは、自己保護の心理が働いているからだ。玄関を一歩出れば、世間の風は冷たく厳しい。住まいの内側ぐらいは心地良い色で整えようとしている。清潔な白い家に帰って来るよりも、玄関でハグしてくれそうな空間を現代人は求めている。

家の壁だけではなく、メディアも、ひんやりしたモノよりも、ユーザーの体温が伝わり、交換されるような音色が求められているようだ。
とっくに廃れて無くなったと思っていたカセットテープが復活している。昨年、アメリカでは、13万本も売れた。カセットテープのプレイリストを作るのは、とても面倒くさい。でも、そこに情熱を傾ける若者の気持ちは分かる。日常のいろんな場面を考えながら、自分の手で構築した形ある音楽の世界は魅力的だ。
再生・停止の時の「ガチャン」という実体のあるスイッチの音も、好きな音楽を好きな人に手渡す瞬間に感じる幸福も、冷たいインターネット空間では味わえない。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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