世の中は貸しと借りで動いている

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  遥洋子 

「今回は泣いておきますので、次回は・・・」という話など、 私なんかですら日常だ。  あるいは、「今回は予算を都合つけましたが、 予算のない時には協力いただけますか」 「値引きはできませんが、そのかわりにこれをおつけいたします」 「これをやってくださるなら、うちはこの役者を提供いたしましょう」etc…。  

そこで生じた“貸し”や“借り”を意識できない人とは、 その後のビジネスは難しい。お付き合いすら難しい。  実は友情ですら、この方程式で成立している。 返す返さないは、返せるか返せないかという事情にもよるので、 突き詰めると、そこに貸し借りがあることを“意識できているか”ということにつきる。  

楽屋を出て、ロビーを通る。  私がその女優に送ったスタンド花が一番目立つところに置かれてあった。  微力ながらチケットを協力したことへの“借り”を ちゃんとわかっている女優から私へのそれが返事だ。 「わかっているよ」と、そのスタンド花の位置が言う。  

社会のコミュニケーションはその多くが貸し借りで成立している。  長く働いているからといって、高い地位だからといって、 その感覚を持っているかの有無は別だ。  

血縁だと今後も愚痴を言いつつ縁が続くのだろうが、 その感覚を持てない仕事相手とは単発の仕事になろう。 そのかわり、その感覚を持つ相手は大切に離さないつもりだ。  その相手は貸し借りがわかる人物かどうか。 人を見極めるいい指針だと思う。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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