「走ることについて語るときに 僕の語ること」村上春樹

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ひきた よしあき

50歳を手前にして、人生が急勾配になったように見えた時期だった。青春の晩年のような時期で、何もかも若手の勢いに追い越され、先を走る人たちとの距離がどんどん広がるように思えてならなかった。そんな時期に、この本に出合った。 
村上さんの走ることについての言葉、「僕が目にしているのはせいぜい3メートルほど先の地面で、それより先のことは分からない。僕のとりあえずの世界は、ここから3メートル先で完結している。その先のことを考える必要はない」。コツコツやる、という抽象的な言葉が、急に具体的になったように見えた。3ページ先が面白いか。充実しているか。ダメなら3ページ前から戻ればいい。とにかく前へ進むんだ。
村上さんが書いているけれど、大切なのは集中力と持続力なのだ。村上さんは、マラソンを走るとき、どんなに厳しい状態でも、止まったり、歩いたりしない。人からは歩いているような速度に見えても、自分では走る意思を持っている。だから自分の墓碑銘には、「少なくとも最後まで歩かなかった」と書いて欲しいというところでこの本は終わる。 
この言葉が、やがて50歳を迎える私にどれだけ力を与えてくれてことか。人間だから、スランプも限界も感情がコントロールできない時もある。しかし、大切なのはそれでも歩調を緩めないことだ。人が去っていっても、人生という長距離の中では必然だし、経験則として離れた人数分の新しい出会いが必ずあるものなのだ。 
そんなわけで、私はこの本をみんなに推奨している。私の人生哲学は、村上さんの受け売りで物真似だから、これは私の人生哲学書でもある。

エンジンオイル、OEMの仲間へ。村上春樹さんの生き方はグーですね。
大いに参考にしましょう。

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