白い壁が減っている

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国文学研究資料館、館長。ロバート・キャンベル

洋間に白いクロス。日本では普通の事だ。アメリカでは、白い壁が減っている。アメリカでは、賃貸物件でも、住む人が好きな色で部屋の壁を塗装することができる。
最近は、濃くて深い色を選ぶ人が増えているようだ。清潔で飽きが来ない白い壁は、なぜ選ばれなくなったのか。これは、自己保護の心理が働いているからだ。玄関を一歩出れば、世間の風は冷たく厳しい。住まいの内側ぐらいは心地良い色で整えようとしている。清潔な白い家に帰って来るよりも、玄関でハグしてくれそうな空間を現代人は求めている。

家の壁だけではなく、メディアも、ひんやりしたモノよりも、ユーザーの体温が伝わり、交換されるような音色が求められているようだ。
とっくに廃れて無くなったと思っていたカセットテープが復活している。昨年、アメリカでは、13万本も売れた。カセットテープのプレイリストを作るのは、とても面倒くさい。でも、そこに情熱を傾ける若者の気持ちは分かる。日常のいろんな場面を考えながら、自分の手で構築した形ある音楽の世界は魅力的だ。
再生・停止の時の「ガチャン」という実体のあるスイッチの音も、好きな音楽を好きな人に手渡す瞬間に感じる幸福も、冷たいインターネット空間では味わえない。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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零細製造業にこそ競争戦略を

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楠木 建

─性能よりも価値に目を向ける─

職人芸とよばれる高精度なものづくり技術を有する日本の企業には、経営者的な目線や新規事業開発への意欲が薄く、現状維持を支持する傾向がある。製造業、それも零細企業によるものづくりに新たな可能性を切り開くには、どのような視点が必要なのでしょうか。

そもそも戦略が必要となる最大の理由は資源制約があるからです。資源制約がないなら戦略も不要となります。思いっきり、思いつくこと全てをすればいいので。資源制約があるからこそ戦略をもつ必要があるのです。
ベンチャー企業がIPOして大量のキャッシュを手にした瞬間に、経営がゆるくなるケースはよく見かけます。資源制約がゆるくなると、一つ一つやることの背後にある論理的なつながりに目が向かなくなります。

戦略の本来の意味合いからすれば、厳しい資源制約におかれている規模が小さい企業の方が、自然と戦略的に行動してしかるべきなのです。とりわけものづくりの会社は、ものづくり自体を目的にせず、それの価値を顧客に届けるまでの一連のストーリー(戦略)を意識することが重要です。
ところが、ものづくり技術が強い会社ほど、それ自体を自己目的化する傾向が強い。

それをどうやって顧客に価値として認識させるかという当たり前の話にもっと時間を費やした方がいい。例えば育児用品のトップメーカー、ピジョンです。もちろん同社の哺乳ビンは性能がいい。しかし、それだけでは商売になりません。どうしたらそれを買うお母さん、その先にいる赤ちゃんに価値が伝わるかを突き詰める。そこにピジョンの経営と戦略の内実があります。
ものづくりという行為自体にマニアックになってしまい、本来の商売の本筋を見失ってはなりません。性能よりも価値に目を向ける。ここに戦略づくりの起点があります。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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