新居佳英&松林博文
■エンゲージメントの高いスターバックス
スターバックスの店員の愛想の良さや、
丁寧かつフレンドリーな接客態度、
気遣い、明るくいきいきとした働きぶりに、
良い印象を抱く。
ドリンクカップに手書きのメッセージを添えるといった、
きめ細やかなサービスも知られている。
スターバックスの店員は、生き生きしている。
カフェの業務には退屈なルーティンワークも多いし、
店員の多くはアルバイトで、
特に高額の給与をもらっているわけではない。
また立ち仕事がほとんどで、身体的にも楽ではない。
にもかかわらず、いつも明るく楽しそうに働けるのは、
高いエンゲージメントがあるからだ。
たとえば、スターバックスには、
人々にとって
家や会社に次ぐ3つ目の居心地の良い場所
「サード・プレイス」をつくるというビジョンがある。
また「カスタマーサービスビジョン」として
「一人ひとりのお客様の日常に
心豊かで活力をもたらす瞬間を創り出す」
というビジョンを掲げている。
分かりやすく、心に響くビジョンは、
スタッフが自分の仕事の意味を理解し、意義を感じ、
プライドを持って仕事をすることを助ける。
また、スターバックスでは一緒に働くメンバーを
「パートナー」と呼び、
「お互いに心から認め合い、
誰もが自分の居場所と感じられる文化をつくる」
という行動指針を掲げている
誰もが自分の居場所と感じられる、そんな帰属意識は、
良好なチームワークや主体的な行動、
店のためにできるだけのことをしようという
自発的な貢献意欲につながる。
このように、働く人たち自身が、
仕事の意味をよく理解し、組織に愛着を持ち、
そのビジョンのために自発的に貢献しようとする状態が、
エンゲージメントが高い状態だ。
ちなみに、スターバックスは
採用に困ることがない。
スターバックスで働きたい人が大勢いるだけでなく、
かつて働いていた人が戻ってくることも多々あるそうだ。
急に人手が足りなくなった店舗に、
元スタッフが戻ってきて手伝うといったことが
何度も起きている。
これはスターバックスの従業員の
エンゲージメントの高さを象徴している。
■エンゲージメントの高い組織として有名なディズニー。
ディズニーの「キャスト」と呼ばれるスタッフたちもまた、
行き届いたサービスで来場者を感動させることで定評がある。
エンゲージメントの定義を見てみる。
《従業員の一人ひとりが
企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、
自発的に自分の力を発揮する貢献意欲》
これはスターバックスの店員のイメージとも
ぴったり重なる。
■似たような意味で使われてきた言葉として、
従業員満足度、モチベーション、ロイヤルティがある。
従業員満足度は「従業員がどれだけ会社や職場に
満足しているか」を定量化したもの。
主に給与、福利厚生、職場環境、人間関係について
振り返って評価する。
意味のある指標だが、
個々の社員が「満足している」状態と、
「主体的・自発的に仕事に取り組む」状態は
必ずしもイコールではない。
一方、エンゲージメントは、熱意や活力など、
個人の意欲が組織や仕事に
どれだけ向かっているかを測定したもの。
自己の成長につながっているか、やりがいはあるか、
承認を得られているか、方針に納得できているかなど、
組織と仕事に対する個人の感覚や状態を評価する。
これは従業員満足度とは異なり、
仕事上のパフォーマンスに大きな影響をもたらす。
■「働き方改革」
主にホワイトカラーの生産性向上を目的とした
長時間労働の是正だ。
サービス残業などの不要な長時間労働を
是正することは必要だ。
しかしながら、ただ労働時間を減らすだけで
生産性が高まるものではない。
現在の「働き方改革」には、本質的に大切な要素が
抜け落ちている。
そのために日本経済をさらなる低迷に
陥れてしまうリスクさえある。
その要素が「エンゲージメント」という概念だ。
そして残念ながら、日本企業では一般的に、
エンゲージメントが非常に低い。
エンゲージメントが低い状態では、
組織のパフォーマンスや生産性が高まるはずもなく、
ましてや昨今の知識産業において
重要な創造性や革新性などが発揮される
可能性は極めて低くなる。
逆に言えば、働く人たちのエンゲージメントを
高めることができれば、
日本経済を復活させることができる。
エンゲージメントの高さと生産性や収益性の間には、
正の相関がある』
■従業員第一主義として有名な
アメリカのサウスウエスト航空は、
エンゲージメントが高い会社だ。
そこには、強力な会社への愛着心や、
会社と従業員の絆がある。
たとえば、従業員なら誰でも書き込める社内SNSがあり、
ポジションの高くないスタッフも
会社に意見が言うことができ、
それを吸い上げることにより、
多くのスタッフを認める仕組みができている。
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