『勝手にへこまない』

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植西聡

《もっとも愚かな人間とは、他人が責めていないのに、自分勝手に自分で自分を責める人のことをいう。》…19世紀のドイツの考古学者、ハインリッヒ・シュリーマン
トロイア遺跡の発掘で有名なシュリーマンの言葉の意味は、分かり易くいうと、「他人が何の指摘も注意もしていないにもかかわらず、何かを成し遂げても、マイナスの側面ばかり見つめる人がいる。そんなふうに心をへこますことほどバカらしいことはない」ということです。

最近の心理学に「白黒思考」という用語があります。何かをやった時、1パーセントでもうまくいかないと「すべてがダメ」と自己評価を下してしまう思考法です。苦労して書類を作成し、内容も文章もほぼ完璧なのに、一箇所だけ誤字や脱字があるだけで、「この書類はダメだ。提出できない」と考え、破り捨ててしまう人がいたりします。これなどは白黒思考の典型です。
世の中に完璧な人などいませんし、ミスは誰にもつきものです。にもかかわらず、「パーフェクトにこなそう」と考えていては、気も休まらないでしょうし、ストレスもたまってしまいます。したがって、何事もミスが判明したら、「まあ、これくらいならいいか」くらいの気持ちでいることが大切になってきます。あるいは客観的に自己採点し、「70~80点が取れれば十分。今の自分にとって、これがベスト」と言い聞かせるようにするのもいいでしょう。

このように自分を必要以上に追い込まないようにすることも、へこまない生き方につながっていくのです。
よく自分の顔や体型を気にする人がいる。しかし、自分が思うほど他人は気にしていない。容貌や、体型だけでなく、失言や、失敗したこと、恥ずかしかったことなど、ほとんどの人はすぐに忘れてしまう。言われてはじめて、「そういえば、そんなことあったね」と言う程度だ。

「白黒思考」とは、物事を「白か黒か」「良いか、悪いか」「成功か失敗か」「裏か表か」という二者択一で考える思考法。
それに対し、「両忘(りょうぼう)」という禅の言葉がある。白か黒か、善か悪か、正しいか間違っているか、という二者の対立を両方とも忘れてしまえ、ということ。「どちらだっていいじゃないか」と、こだわりや執着を捨てること。究極は、誰が正しいとか間違っているなんてどっちでもいい、なぜなら、「生きているだけでありがたい」のだから。

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