『次世代日本型組織が世界を変える 幸福学×経営学』

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元ソニー上席常務、ホワイト企業大賞企画委員長、天外伺朗

「どうせ働くなら“いい会社”で…」というのは、世界中のサラリーマン共通の願望でしょう。また、できることなら自分の会社が「いい会社」に育って欲しい、と願わない経営者はいません。
仕事があればいい、儲かっていればいい、という時代は過ぎ去り、「いい会社」というのは、いまや産業界全体が追求すべき大きな課題のひとつになっています。私たちは、「いい会社」の表現のひとつに、「ホワイト企業」という言葉を使うことを提案しています。この言葉のいいところは、よく知られている「社員に過酷なブラック企業」の反対なので、誰でも直観的に「社員を大切にしている」という印象が浮かぶことです。少なくとも、漠然としたイメージは共有できます。

私たちはあえて、その漠然としたイメージだけを大切にして、「ホワイト企業というのはこういう企業ですよ」という定義をしないことにしました。定義をしてしまうとそれが目標になります。もちろん目標が明確になり、それに向かって努力をする企業が増えるというメリットはありますが、目標以外の方向性が無視されるので多様性が乏しくなり、また「達成したか/しないか」という結果にとらわれてプロセスがおそろかになり、達成したら終わりという刹那性をはらむ、などの問題点が出てきます。
それよりも、漠然たる方向性だけを示して、「永遠に歩き続ける道」として「ホワイト企業」という表現を使っていこうと考えています。

よく考えると、仕事を通じての幸福は「働きがい」だし、「社会貢献」も幸福に通じる活動です。つまり、この方向性は「社員の幸福の追求」という一点に向かっています。
「幸福は伝染する」という特性があるので、社員が幸福なら、お客様を含めて、その会社に関係するすべての人たちを幸福へ誘う。また、社員が幸福なら創造性が高まり、会社の業績がよくなる。
いままでの経営学は、ひと言でいえば会社の業績向上を合理的に追求してきました。ところが、社員の幸福を無視して直線的に合理性を追求すると「ブラック企業」が生まれます。社員は疲弊して、結局は業績も落ちる。合理性の追求には落とし穴があるのです。
業績を追うより、むしろ「社員の幸福」を追求すると、時間はかかるかもしれませんが、結果として会社の業績も向上します。「ホワイト企業への道」というのは、そういう方向性を示唆しています。このことは、100年もの間「業績向上」を旗印に掲げて発展してきた経営学の前提を、ここで抜本的に見直さなければいけない、ということを意味しています。
また、「幸福」というのも漠然とした概念なので、もう少し、しっかりと学問的に追究する必要があります。かくして「“幸福学”と“経営学”の融合」という、大テーマが浮かびあがってきました。

■伊那食品工業代表取締役会長、塚越寛
「『いい会社』とは、単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人々が、日常会話の中で『あの会社は、いい会社だね』と言ってくれるような会社です。社員はもちろんのこと、仕入先からも、売り先からも、一般の消費者の方からも、そして地域の人たちからも『いい会社だね』と言ってもらえるように心がけています」
そして、「会社は社員を幸せにするためにある」、「会社は永続することに価値がある」とも言っている。どんなに「いい会社」であっても、長く続かなければその存在意義はない。逆に言うなら、本当に「いい会社」なら、消費者からも、そこに働く人からも、取り引き先からも、地域からも、誰からも支持されるので、長く続くに決まっている。時代を超えていい会社であり続ける…それがホワイト企業。

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