『恨みは運を遠ざける』

Pocket

弁護士、西中務

たくさんの争い事のご相談を受けます。その大元には恨みの気持ちがあることも多い。恨みというのは厄介で、近しい人ほど恨んでしまう。ことに、自分の親兄弟のことを、なぜか恨んでいらっしゃる方は珍しくない。

でも、恨みは良くない。なぜなら、恨みは運を遠ざけるからです。逆に、恨みを消すと、不思議と運が良くなる。

〇例えば、会社の社長さんをしている70代のある依頼者と、商売に関するご相談を終えたあと、ふと、こんな話になりました。
「実は、私は早くに母親を亡くしましてね」「母親は35歳のまだ若いときに、病気で急に亡くなったんです。私は12歳でした。小さい子供でしたからね、本当につらくて…」
親御さんが亡くなったのは、昭和30年(1995年)頃です。まだ日本は貧しい頃ですし、経済的にさぞ苦労なさったろう。
「それから若い頃まで、あまりにつらい時期が続きましてね、私は母を恨むようになったんです。『こんなにつらい目に遭うのは、母親が親らしいことを何もしてくれなかったからだ』そう思って生きていたんです」
無理もない。ところが、その人のつらそうな顔が、ここで変わったのです。「母の27回忌で、叔母がこんなことを言ったんです。
『私のお姉ちゃん、あんたにはお母さんやな、最期の最期まで、皆に言うてたんやで。うちの子を頼みます。自分はもう何も食べれないほど体が弱って、頭かて朦朧としてたはずやのに。もう自分の横にいるのが誰かもわからん状態やったろうに。お医者さんやろうが看護婦さんやろうが、私やろうが、もう自分の近くにいる皆に、あんたのことを頼み続けてた。うちの子を、うちの子を…。ずっと、何度も何度も、そう言いながら死んだんやで』
それを聞いて、突然わかったんです。母に死なれて小さな子供だった私は、確かにつらかった。でも、そんな小さな子供を残して死ななければならなかった母は、私の何十倍も何百倍もつらかったに違いない。やっと、私は自分の親不孝に気づいて、心から詫びました」
その人は泣いていました。私も涙が止まりませんでした。叔母から聞いた話をきっかけにして、母への恨みが消えた後、その人は会社経営を成功させました。そして、今では幸せな人生を送っておられる。

母親の恩に気づいたことが、運を変えたのです。「恨(うら)み」「妬(ねた)み」「憎しみ」「怒り」「復讐(ふくしゅう)」…そんな感情を抱えていたら運は決して寄ってこない。
運の神様が好きなのは、「恩」「慈しみ」「ゆるし」「よろこび」「機嫌がいい」「明るい」「笑顔」「感謝」。

争いごとは運を遠ざける。人に喜んでもらうこと、人の役に立つこと、は運が開ける。親の恩に気づくこと。運の良くなる生き方をすること。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾

Pocket