米国型経営の誤った導入

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コーポレートガバナンスは、それぞれのコンポーネントが相互に整合性を持ったシステムとして機能している。このため、一部だけを無理やり変更しても、木に竹を接いだ形になって機能しなくなる。

ある会社のトップは、流行を追って組織のフラット化を断行して、管理職の段階を減らした。
一人の管理者が、ある程度内容を理解しながら指導できる人数は5人前後が限界だ。課や係は、それに対応して組織されていた。だが、1段でも組織をフラットにすると一人で20人以上を指導することになり、たちまち機能不全に陥った。

また、長期間の安定した勤務であった女性の一般職を大幅に削減した。
すると、各課、係の司書として機能していた人間データベースを減らしてしまい、この結果、組織の記憶が失われてしまった。

米国の異常に高いトップの報酬は、米国企業内の一体感を阻害する重大な要因である。
米国企業がトップに高額報酬を払う事が可能なのは、株主の了解無しに報酬委員会だけで、報酬を決められるからだ。日本は、会社法に委員会設置会社を導入して、この悪習を輸入した。

パフォーマンス重視の評価制度は、現場の管理者が部下の採用、解雇、評価を一手に行える場合には、機能する。人事異動も、本人と異動希望先の管理者との直接交渉で行われる。
だが、日本の人事制度では、現場の管理者に採用・解雇の権限が無い。人事異動も本人の希望が叶う事は少ない。
日本的組織で、パフォーマンス重視の評価報酬制度を導入しても、悪い評価を受けた部下が上司や人事部に不満を募らせるだけに終わる。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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