ESGとSDGs

Pocket

日経BP環境経営フォーラム・田中太郎より

ESGだが、環境(Environment)、社会(Social)、
ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。
企業の価値を測る尺度としては、
業績や財務の情報などが主流になっているが、
それだけでは企業経営の持続可能性を判断するには不十分だ。
そこで、環境・社会・ガバナンスといった
非財務情報を企業評価に取り入れようとする動きが
急速に拡大している。

もう1つのSDGsは、国連が2015年にまとめた
持続可能な開発目標のことである。
飢餓の根絶や地球温暖化対策など、
2030年までに世界が達成すべき目標を
17の大きな目標として取り上げている。

2017年7月に、ESGとSDGsが
時代のキーワードであることを示す
3つの出来事があった。

1つめは、世界最大の機関投資家である
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、
ESG投資を本格的に始めると発表したことだ。
ESGインデックスというものを導入し、
株式投資の運用に使っていくというのである。
まずは1兆円規模でスタートし、
今後どんどん拡大していく予定だ。
2016年度の世界のESG投資は約22兆円といわれているが、
日本ではそのうちの2%ぐらいしか占めていない。
今回、GPIFがESGインデックス投資を始めたことによって、
日本の世界シェアが高まっていくことが期待される。

2つめは、7月の半ばにドイツのハンブルクで開かれた
G20サミット。
そこでTCFDから注目すべき最終提言が発表された。
TCFDとは、世界の金融当局が構成する金融安定理事会が
特別に立ち上げたタスクフォース。
そのTCFDが提言の中で、企業に対して、
どんな気候変動リスクがあり、
それに対してどんな戦略を持っているかといった
情報を開示するように求めたのである。
これによって直ちに有価証券報告書に盛り込むように
義務づけることにはならないと思うが、
今後は、アニュアルレポートなどの報告書に、
気候変動リスク、温暖化リスクというものを
開示するという動きが進んでいくのではないかと思われる。

3つめの出来事は、ニューヨークの国連で開かれた
SDGsに関するハイレベル政治フォーラムである。
この会合で、日本の岸田外務大臣(当時)は
約10億ドルを拠出して、
世界のSDGsの取り組みを支援していく方針を発表した。

ESGはソフトな規制へ向かう
SDGsが企業評価の共通言語に

この3つの出来事は何を示しているだろうか。
TCFDの提言やGPIF のESGインデックス導入の動きに
見られるように、今後企業は、
ESGに関する情報開示がますます求められるようになるだろう。

これまでの環境規制などは、法律で基準値を決め、
違反したら罰則というように、
政府がある程度コントロールすることによって機能させていた。
しかしこれからはもっとソフトな規制によって
情報開示を迫られるようになる。
情報開示したデータをもとに、
NPO(非営利組織)や調査会社、投資家など
さまざまなステークホルダーが、
企業の価値を決めていくことになるからだ。
3つの出来事はその兆候として捉えることができるだろう。

そして、企業がなぜSDGsに取り組む必要があるかというと、
ESG投資家などのステークホルダーが企業価値を評価する際に、
SDGsを共通言語にしているからだ。
したがってリコーなどの先進企業のように、
SDGsに基づいた事業戦略というものを
外に向けて発信することが重要なのである。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

Pocket