人間関係を破滅させる”劇薬”

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ボブ・バーグ

噂話は、私たちの当たり前の生活をぶち壊し、あるいは家族関係を切り裂き、あるいは癌のように仕事組織をズタズタにする。

「風の中の羽毛」という19世紀の伝承。
ある一人の若い男性は、いつも、同じ町に住む賢い男性のことを告げ口ばかりして中傷していました。
ある日、その若い男性は人に危害を加えたことをきっかけに今まで人を傷付けてきた自分の行動を自覚しました。
彼は中傷してばかりしていたその賢い男性の家を訪れ、今まで自分がしたことを謝罪し許して欲しいことを伝えました。
しかし、その賢い男性は、自分のことを悪く言うその若い男性に”ある条件”のもとでなら、その若い男性のことを許してあげると伝えました。その条件とは、自宅へ戻り、自分の家から羽毛の枕を持って来て、それを切り裂き、崖の端へ行き、その枕の羽毛を風の中にまき散らすというものでした。
若い男性は、それをした後、賢い男性の家へ戻りました。その若い男性は、賢い男性からの不思議な提案に困惑したものの、提案がとても簡単な内容だったので、安心していました。彼は、即座に枕を切り裂き、羽毛をまき散らし、賢い男性の家へ戻りました。「戻ってきました。許してもらえますか。」と尋ねました。
では「もう一つだけ」と賢い男性は返答しました。そして‥「今から、そのまき散らした羽毛を全て拾い上げて下さい」と続けました。
若い男性は「けれども、そんなことは不可能です。まき散らした羽毛は、風に乗ってまき散らされてしまったのですから。まき散らした羽毛を拾い集めるなんて無理です」と言い返しましたが「まさしくその通り。」と賢い男性は答えました。
「あなたは本心から自分がしてしまったことを正そうとしているのかもしれませんが、あなたの言葉によって私が受けた損害を修復することは、あなたが自分でまき散らした羽毛を回収できなかったことと同じくらい不可能なことなのです。あなたが口にしたことは、もはや既にあらゆるところに拡散しています」

私の個人的な経験からすると、このストーリーは、私たちが持つ言葉の性質をよく捉えている。人間関係を破滅させる”劇薬”人間の性質として、他の人が誰かについて話す悪を信じたり、反応しやすい。例えば、週刊誌やテレビといったメディアが流す「ゴシップ」を簡単に受け入れてしまうように。
さらに悪いことに、多くの人があの民話の男性のように噂話がもたらす破滅的な影響を想像する力が弱いがために、広がってしまっている悪い噂を「自分」の問題として捉えることができない場合がある。だからこそ、私たちが話す噂話は、相手に大きな損害を与えかねないことがあることを理解しておく必要がある。

私の友人ポール・マイヤーは、「噂話は、危険な銃弾のようなものであり、一度その音を聞いた者は、その音を決して忘れることができない。」と言っている。まさしく噂話とは、ただ単に、相手に何かを伝えることとは性質が異なり、伝わってしまった相手を傷つけてしまうことをよく表している。

よく言われることに、「棒や石は骨を折るかもしれないが、言葉は少しも傷つけない」というものがある。しかし、耳にする内容が、誰かを傷付けると判断できるのであれば、私たちはそれがまったくもって真実でないと分かる。
一般的に、ケガや病気といった身体の不調は治療や時間が経過することによって状態は改善する。だが、噂話によって受けてしまった傷は、相手の生涯に渡って治らないこともあり、最悪の場合、相手の自尊心を引き裂くこともある。

一方で、親切さや配慮に溢れた、あるいは勇気を与えられる言葉は、相手の自尊心を育むことに繋がることや男女問わず、人が成長し、人生の中で素晴らしく、重要なことを成し遂げるために必要な体験に繋げられる。

私たちにはどのように言葉を発信するかの選択は、自分に判断の裁量がある。そうした選択ができることは、「自由な意思」を持っていることと等しい。
だからこそ私たちは「自由な意思」に基づくがゆえに、自分の言動の重さを認識し、常に正そうとする意識が必要となる。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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