自分を甘やかすと麻痺がくる

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全精神科医、斎藤茂太

「自分を甘やかすと麻痺がくる」といったのは、イギリスのチャーチルだ。
「もう年だから、うんと楽をさせてもらおう」「道で転んで怪我したらたいへんだから、なるべく家にいることにしよう」。「お嫁さん、炊事洗濯は、あなたがやってね」と、自分は何もせずに一日中テレビの前にいると「麻痺がくる」、つまり体も心も「廃用性委縮(はいようせいいしゅく)」、使っていないところから弱ってくるのだ。

もちろん年を取れば、体力は落ちる。
耳は遠くなり、目はかすむ。体のあちこちが痛くなる。ついつい近くにいる人に甘えてしまいがちだが、自分の身の回りのことは、自分でするように心がけたい。さまざまな文明の利器は年寄りにとって、味方でもあれば敵でもある。ボタンひとつで機械がやってくれる便利な世の中は体力のない年寄りにはありがたい。が、それに甘えていると、ますます体力が落ちてゆく。

こんな実験があった。ニンジンやジャガイモの皮をむく、皮むき器というのがある。使いやすくて便利なのだが、それを使っているときと、むかしながらに包丁を使って皮をむいているときと、脳の働きにどのような違いがあるか調べると、包丁を使っているときのほうが脳は活発に働いていた、という実験結果が得られた。

手を使うことが脳にいいことは、以前からいわれている。
「ちょっと面倒だな」と感じることを、あえてする。これがポイントだろう。もし人に面倒な頼み事をされたときも無暗に嫌がらない。
こんな年寄りに頼ってくれる人がいるのを、ありがたいと思い、できる範囲で引き受けてみる。人に頼られていることを実感するのは、年寄りにとって張りあいになる。
「ちょっと面倒だな」と感じることをやる必要があるのは、なにも年寄りだけの話ではない。若い時から、「面倒なこと」「自分の得にならないこと」「気の進まないこと」などを避けてくると、運はたまらない。

〇「損から入ると運がたまる」  萩本欽一
損や面倒なこと、気の進まないこと、から入ると運がたまる。往々にして運は、自分の思ってもみない方向から飛んでくるからだ。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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