『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』

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鴻上尚史

1944年11月の第一回特攻作戦から計9回出撃し、
1回は至近爆発、もうひとつは命中、
陸軍参謀に「必ず死んでこい!」と言われながら、
命令に背き、何度も奇跡の生還を果たした佐々木友次
(ささき・ともじ)。

結果を出すとはどういうことか、
そのために組織やマネジャーは
どうあらねばならないのか。

「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。
その代わり、死ぬまで何度でも行って、
爆弾を命中させます」

「きさま、それほど命が惜しいのか、腰抜けめ!」
佐々木伍長は落ち着いた声で答えた。
「おことばを返すようですが、死ぬばかりが能ではなく、
より多く敵に損害を与えるのが任務と思います」

──急降下は苦しい方が大きいんですか、
わくわくするほうが大きいんですか?
「わくわくしますよね。
いや、わくわくなんていうもんじゃない。
しょっちゅう、見張らないといけない。
見張りは自分一人しかいないんですから」
──見張らなきゃいけないのはものすごく気を遣いますよね。
楽しんでいる暇もないんじゃないですか?
「いやあ、楽しむぐらいの技量を持つことが大事なんです」
──空にいるのは好きだったんですよね。
また飛びたいっていう思いも、
自分を支えたっていうことですかね?
「そうですね、戦場に行くのが恐ろしいとか
あんまり思ったことないですよ。
飛んでいればいいんです」

そもそも、僕は「命令した側」が、
「命中率」で特攻を語ることが理解できません。
佐々木友次さんは9回出撃して、2回爆弾を落としました。
1回は至近爆発、もうひとつは命中でした。
何回も出撃するから、この結果を得られたのです

僕が「命令した側」に対して理解できないのは、
フィリピン戦から沖縄戦にかけて、
「特攻の効果」が著しく逓減したことを知りながら、
特攻を続けさせたことです

「精神」を語るのは、リーダーとして一番安易な道です。
本当に優れたリーダーは、リアリズムを語ります。
現状分析、今必要な技術、敵の状態、対応策など、です

「集団我」が効果的に発動すると、
例えば「駅伝」で、自分一人のマラソンでは
想像もつかない頑張りができて、
自分で自分の結果に驚く、なんてことが起こります。
「集団我」が悪く働くと、大勢だと威勢がいいが、
一人になると何もできない人間になります

ずっと続いていることを、無理に止めることはない。
自分はそれを止める立場にはない。
そもそも、続いていることは、止めることより、
続けることの方が価値があるのだ、
という思いこみが「所与性」の現れです

佐々木氏の生き方・考え方には、
成果を出す人間の共通点がある。
(向いていること、好きなこと、
他人とは違う感じ方を持つこと)

人には「天職」というものが存在する。

敗戦の原因は、リーダーが
リアリズムを失ってしまったことであり、
当時の日本にはリーダーたちの目を曇らせる
さまざまな環境要因があった。

「本当に優れたリーダーは、リアリズムを語ります」

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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