『「成功」と「失敗」の法則』

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稲盛和夫

企業経営において、長く繁栄を続ける企業を
つくりあげていこうとするなら、
「徳」で治めていくしか道はない。

欧米の多くの企業では一般に、
覇道つまり「力」による企業統治を進めています。
例えば、資本の論理をもって
人事権や任命権をふりかざしたり、
または金銭的なインセンティブ(誘因)をもって、
従業員をコントロールするのです。

しかし、権力によって人間を管理し、
または金銭によって人間の欲望をそそるような経営が、
長続きするはずはありません。
一時的に成功を収めることができたとしても、
いつか人心の離反を招き、必ず破滅に至るはずです。

企業経営とは永遠に繁栄を目指すものでなければならず、
それには「徳」に基づく経営を進めるしか方法はないのです。

実際に、経営者の人格が高まるにつれ、
企業は成長発展していきます。
「経営はトップの器で決まる」のです。

会社を立派にしていこうと思っても、
「蟹は自分の甲羅に似せて穴を掘る」というように、
経営者の人間性、いわば人としての器の大きさにしか
企業はならないものなのです。

例えば、小さな企業の経営で成功を収めた経営者が、
企業が大きくなるにつれ、
経営の舵取りがうまくとれなくなってしまい、
会社を潰してしまうということがよくあります。
それは、組織が大きくなっていくにつれ、
その経営者が自分の器を大きくすることが
できなかったからです。

企業を発展させていこうとするなら、
まずは経営者が人間としての器、
言い換えれば、自分の人間性、哲学、考え方、人格
というものを、絶えず向上させていくよう、
努力を重ねていくことが求められるのです。
しかし近年、日本ではそのようなことを
理解する経営者が少なくなっています。

少しばかり事業で成功を収めただけで、謙虚さを失い、
傲岸不遜(ごうがんふそん)に振る舞い、
私利私欲の追求に走ることで、
せっかく手にした成功を失ってしまう経営者が続いている。

いまこそ賢人、聖人たちの知恵に学び、
「徳」ということの大切さを改めて理解することが大切です。

そうすることが、単に一つの集団の発展を導くのみならず、
荒(すさ)みいく日本社会の再生にあたっても、
大きな貢献を果たすのではないでしょうか。

「徳とは無類の明るさのことである。安岡正篤

知識や技術は徳ではない。
明るく、人好きで、世話好きで、
人に尽くすことができる人こそ、徳のある人なのである
(行徳哲男)

徳とは、相対したとき、自然と頭が下がるような
人のことをいう。
利他の心を持ち、けっして偉ぶらず、謙虚で、
人から好かれる人。
それが、無類の明るさ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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