『幸せはあなたの心が決める』

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渡辺和子

女子学生たちと五十年以上接していて気がつくことは、
この年頃の人たちの多くが、愛に必要なのは、
すばらしい対象に出会うことだと考えていることです。

それも決して間違いではないのですが、
その対象が「すばらしさ」を失った時にも、
果たして愛し続けることができるかどうか、
ここに「愛の本質」が問われています。

健康だった相手が病気になってしまった時も、
前途を嘱望されていた相手が挫折にあった時にも、
その人を愛し続けることができるかどうかは、
私たちが自分の中に、「愛する力」を
養い育てているかどうかに、かかっているのです。

エーリッヒ・フロムが
『愛するということ』という本の中で、
「愛するということは、単なる熱情ではない。
それは一つの決意であり、判断であり、約束である」と
きびしい言葉を述べているのも、
この愛の本質を指摘したものと言えるでしょう。

ふだんからピアノの練習もせずに、
立派なピアノを見つけさえすれば、上手に弾けると思ったり、
絵を描く練習もせずに、
ひたすら美しい景色を探している人にも似て、
ふだんから「愛する」練習をしないで、
すてきな人との出会いを待っていては、いけないのです。

愛する力を育てるためには、まず私たちが毎日の生活の中で
「当たり前」と考えていることや、人、物を「有り難い」と、
感謝の気持ちで受けとめることが大切です。

マイナスの価値しかないと思えることや、
不幸、災難、苦しみにさえも意味を見出して、
これまた「有り難い」と感謝できる時、
私たちは愛すべきものを随所に持ち、
愛し難い人さえも、その人の存在そのものの価値を認める、
愛深く幸せな人間になれるのです。

〇昔の人は、「一緒に苦労してくれないか?」と
プロポーズして結婚した。
今の人は、「一緒に幸せになろう」と言って結婚する。

一緒に苦労するのが前提なら、
二人で苦労することは何ともない。
しかし、幸せになろうと言って、
苦労することになってしまったら
「話が違う」ということになる。

昨今、離婚が増えているのは、
こんな理由もあるからでしょうね。

日常の中で、当たり前の幸せに気づける人は、
普段から苦労することを厭わない人。
苦労が前提だから、ちょっとした幸せにも気づくことができる。

物事はうまくいかなくて当たり前、と肚をくくると、
ほんの少し成功しただけで感謝できる。
満足するレベルを低くとることはとても大事だ。

マイナスの価値しかないと思えることさえにも、
意味を見出して感謝できる人は既に幸せの境地にいる。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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