秋、男はスーツで勝負せよ!

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西 ゆり子

50過ぎたらスーツにトレンドは不要

「この秋の、スーツスタイルのトレンドは?」──
ここだけの話ですが、
毎年、私を最もうんざりさせるのが実はこの質問。

なぜなら、長い歴史を持つスーツスタイルは、
既にすべてが完成されていて、
トレンドや流行の入り込む隙などないからです。

そう聞いて、少しホッとしませんか? 
これからは、流行に振り回されずに
スーツを選んで着れば良いのですから。
毎年代わり映えしないと思われていた
「定番」のスーツこそが、
あなたに魅力と個性、地位相応の貫禄を与えてくれる力を
持っているのです。

“いつも同じスーツ”に個性と魅力が宿る

長年、ファッションの仕事に携わってきて思うのは、
素敵な男性ほどいつも同じスーツを着ているということ。
毎日違うスーツを着て登場する人に比べて、
なぜか誠実さや落ち着き、そして“その人らしさ”が感じられ、
深く印象に残るのです。

その方に聞いてみたところ、やはり2~3着を
着回しているとのことでした。
スーツを買うのは十数年に1回程度。
あとは体型の変化や傷み具合に応じて
「お直し」をしているそうです。

そう、男性のスーツはまさに一生もの。
ちゃんと手入れをすれば100年だって余裕で着続けられる。
本来スーツとは、そういうものなのです。

「20×1」と「5×4」の差が語るもの

だからこそ提案したいのが、“いいもの”を長く着こなすことを
前提としたスーツ選びです。
上質な生地で上質に仕立てられた上質なスーツは、
それだけで着ている人の格を物語ってくれる存在。
つまり、「いいものを知っているかどうか」が、
男性の魅力につながるわけです。

これからスーツを新調する予定がある方はぜひ、
10年とは言いませんが、少なくとも5年は着回すつもりで
選ぶことをおすすめします。
例えば20万円の予算があるとしたら、
5万円のスーツ4着より、20万円のスーツ1着で。
それができる男性ほど、おしゃれで芯のある
カッコ良さが漂うのは間違いありません。

1着買い足すならコレ

この秋、新しいスーツを「1着」買うのであれば、
知っておきたいスーツ選びのコツをお教えします。
まずは色から。
以前はブラウンのスーツが圧倒的に多かった日本ですが、
ここ十数年は不人気。
茶色は日本人の肌色には合うものの、
老けて見えたり、もっさりと見えてしまいがちなため、
店頭からは姿を消しました。
“どうしても茶色が好き”“よく茶色が似合うと言われる”
などという以外は、
あえてこの色を選ばなくても良いでしょう。

代わりに多く見られるようになったのが、
グレーやネイビーです。
スラッと細身に見せる効果もあり、
今後しばらくはこれらの色系統が主流になるでしょう。
その際、黒い靴だとより落ち着いた印象に、
茶系の靴だとやや今っぽく軽快な印象になります。
本来、茶系の靴はあり得ない組み合わせでしたが、
ストリートファッションの影響を受け、
今や定番になりつつあります。

次に素材。ファッションは先取りが基本ですから、
若干暑くても、あたたかい印象の素材で季節感を出すと
グッとおしゃれに見えます。
9月は薄手の平織りウール、10月はウール、
11月はツイードなど。
オフィスにマッチして着回ししやすいのは、
やはりプレーンなウール素材です。

そして裏地について。
欧米では総裏地が主流で、
湿気の多い日本は背抜きタイプのものも多いようです。
本来の目的でもある「生地を守る」という意味では
総裏地タイプなのでしょうが、
背抜きタイプは、軽さやソフトなイメージが出せるという
メリットも。
これはお好みでチョイスしてください。

コレというものが見つかったら、今までのスーツと合わせて
1~2着を、とことん着回してみてください。
とにかく着倒して体になじませることが、
カッコよく着こなすために何より必要な過程なのです。

行きつけの店を作ろう

さあ、買うべきスーツのイメージが
何となく見えてきたでしょうか。
次なる課題は「どこで買うか」です。
重要視すべきは、正確には「どこで」ではなく
「誰から」買うか。
サイズや好みを含めて、自分に合うものを探してくれる人、
覚えていてくれる人が一人いると安心です。

そのためには「行きつけの店」を作ること。
スーツ自体は数年~十数年に1回の購入だとしても、
シャツやネクタイといった小物も同じ店で
同じ担当者からこまめに購入すれば良いのです。
担当者が相応しいものをチョイスしてくれるため、
選ぶのもずっと楽になるし、失敗も減ります。
なお、ひとつのブランドに決めておくと統一感が出て、
自分のイメージを確立しやすくなります。

お店では、その店でいちばん上質なスーツに腕を通して、
着心地の良さを体感してみることも忘れずに。
予算的に厳しく、今は買えない・買わないとしても、
“いいもの”を知ることでセンスも磨かれ、
余裕のある着こなしができるようになります。

悩んだら「紺ブレ」に回帰

スーツではなくジャケットのみ買い足したいという場合は、
何はともあれ「紺のブレザー」をおすすめします。
ボトムスを選ばず誰にでも似合う万能服で、
スポーティーかつ都会的な印象を与えるほか、
凛としたネイビーカラーが肌を明るく、
若々しく見せてくれます。

「あれ、持っているぞ」という方は、
昔のものをひっぱり出してきてもOK。
金ボタンで肌ツヤよく、リッチな雰囲気を演出しましょう。
ウールのチェックシャツなど
カジュアルなシャツとの相性もよく、
コーディネートの幅も広がります。
もう少しキッチリしたいという方は、
オックスフォードのシャツがオススメ。
正統派な着こなしになります。

このように、ジャケットを体になじませる
“練習”を重ねていくことで、
スーツがカッコ良く決まるようになります。
場数を踏んで、ジャケットがあなたの体のラインに
しっくり添うようになったとき、

「おしゃれな人」と認定されるはずです。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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