『アメリカンドリームの終わり』

Pocket

ノーム・チョムスキー

どうしてここまでひどい格差があるのに、
みな不満も言わずに頑張っているのか。
それは、「いつかは自分もああなれる」という
「アメリカンドリーム」があるからです。

でも、もしそのアメリカンドリームが
終焉に向かっているとしたら?
アメリカンドリームの重要な部分は、
階級の移動性であり、それが今、崩壊しつつある。

今後の先進国の政治・経済・社会をうらなう上で、
極めて重要な位置を占めています。

アメリカの偽善、資本家の偽善、そして見せかけの民主主義…。

サブタイトル「富と権力を集中させる10の原理」

重要なことは、特権階級や権力層が決して
民主主義を好んだことはない、ということです。
それには十分な理由があります。
民主主義は民衆の手に権力を委ねるものだからです。
逆に言えば、特権階級から権力を奪うものです。
だからこそ富裕層は民主主義を嫌います。
それが、富と権力を集中させる基本原理です

社会が不平等になればなるほど、
国民の健康に深刻な悪影響がもた
らされる、とされました。
富裕層にすら、その影響が出てくるというのです。
というのは、不平等という事実そのものが、
人びとの社会的な人間関係も、意識も、生活全般も
むしばんでいくからです

アリストテレスは正しかったのです。
かれの言うとおり、民主主義の矛盾を克服する方法は、
不平等を減らすことであって、
民主主義を減らすことではありません

最近の公教育は、教育を技術訓練に貶めることに
力を注いでいます。
こうして、子どもたちの創造性や独立心を奪うのです。
これは単に生徒・学生だけではなく、
教師の創造性や独立心さえも奪います。
それが「テストのための教育」です。
具体的には、ブッシュ大統領の「落ちこぼれゼロ法案」、
オバマ大統領の「トップをめざして競争せよ法案」です

会社経営の頂点に座る人たちは、いまや技術者ではなく、
大学の経営学修士号を取得した人たちばかりです。
かれらはさまざまな種類の詐欺的な金融操作を学んで
卒業してくるのです。
そしてこのことが、経営者の態度を一変させました。
かれらはますます企業に対する忠誠心を失い、
自分自身にだけ忠誠心を発揮するようになってきています

なぜそこに働く労働者や地域共同体が、
その鉄鋼会社を経営してはならないのでしょうか

考えてもみてください。
仕事を増やし、投資を増やしたければ、
需要を増やしさえすればよいだけです。
もし需要が増えれば、
投資家はその需要を満たすために投資するでしょう。
だから、投資を増やしたければ、
貧しい人たち、働く人たちにお金を与えればよいのです。
そうすればかれらは、それを高価なヨットや
カリブ海の休暇には使わないで、
生活必需品の購入に充てるでしょう

たとえ不法就労者であっても、
かれらはこのアメリカで生活し、
ビルの建設作業に携わり、芝生の草を刈ったりしています。
にもかかわらず、かれらは人間ではないのです

『国富論』の、たとえば、四五〇頁まで読み進んだひとは
そう多くないでしょうが、
しかし、アダム・スミスは、そのあたりから
分業を鋭く批判しはじめているのです。
分業は人を機械に変えてしまうから、というのがその理由です

真に知的な人間とは、難しいことの本質を、
平易な言葉で、かつワクワクしながら語れる人だ

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

Pocket