『幸せとお金の経済学』

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ロバート・H・フランク

「感謝すること」「幸福をかみしめること」などの心構えを説く自己啓発書はそれこそ山のようにありますが、なぜわれわれが「幸福じゃない」道に突き進んでしまうのか、その原理を説明します。

われわれが購入する財を、「地位財」「非地位財」に分け、それぞれの違いを論じます。
・地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの
・非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの

われわれが不幸になってしまうのは、地位財を過剰に追い求めて、心を豊かにしてくれる非地位財にお金を配分できなくなるから。非地位財へのお金の配分がカギです。
非地位財を求めることこそが本質的な価値の追求につながるにもかかわらず、我々のDNAは我々に競争することや、地位財を追い求めることを強いてきます余分に使ったお金のせいで生活の質を本当に高めてくれるようなものへの支出がないがしろにされてしまう

1950年には加速力に優れているとされていた車が、今日のほとんどのドライバーにとって遅く感じられるのは言うまでもありません。家のサイズについても同じで、同じ地域の他の家と比べて大きければ大きいほど、広々とした家だと見なされます。要するに、いついかなる場所においても、評価は過去との比較や他者との比較というコンテクストで決まるのです
1つ目の思考実験実際にはほとんどの人が、絶対的なサイズは小さくても、相対的には大きな家が持てるBの世界を選ぶ
2つ目の思考実験自分は1年に4週間、他の人は6週間の休暇がとれるCの世界、そして自分は2週間、他の人は1週間の休暇がとれるDの世界のうち、どちらか一方を選びます。この場合は、Cの世界、つまり相対的に短くても絶対的に長い休暇を選ぶ人がほとんど
住宅は地位財、休暇は非地位財「地位獲得競争」に陥ると、資金が非地位財に回らなくなって幸福度が下がる

──幸せな被験者──の場合、対照群と比較して、見知らぬ人を手伝う可能性がきわめて高い
地位が低い人ほど早く死ぬ
格差が大きい地域では離婚率が高い
金持ちが大きい家を建てると、庶民の家まで大きくなる

豪邸や高級時計を欲しい理由が、自分の社会的立場を示したいだけなら、他の手段で評価されるように仕向ければ良いのです。
どれだけの豪邸を建築できるかではなく、どれだけ貯蓄できるか、どれだけ慈善活動に寄付できるかが重要だと思わなければならない。そのほうが社会的にも大いに生産的です

今でも既に起こりつつありますが、お金持ちが、過度な消費を控えれば、社会全体の幸福度がアップするはずです。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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