リーダーの要諦をロバート・カプラン教授に聞く

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佐藤 智恵 ダイバーシティの意味を教えてくれた日本

佐藤:  日本でアジア・パシフィック・投資銀行部門のトップとして 活躍された5年間で、最も学んだことは何でしょうか?

カプラン:  私にとっては初めての海外勤務で、日本からは多くの事を学びました。  
まず、「国も文化も、一つとして同じものはない。だから、私のように外国から来た人間は 学生のように学ばなくてはならない」という事を実感しました。  よくビジネスリーダーや政治家が「ダイバーシティの時代です。他の国を理解しましょう」と言いますが、それは間違ったメッセージだと思います。
例えば、私たちは異国の人と接するとき、見た目や文化的な背景で分類して、  「こういう人だろう」と判断しがちですが、実際のところ、その人を本当に理解することなどできません。
アメリカ人は、少し日本に住んだことがあると 「日本人のことを、自分はよく理解している」と思い込みがちですが、それは間違っています。お互いに、あまりにも違いが多すぎて、理解する事などできないのです。
「僕は日本に20回も行った事があるから、日本の事は良く知っているんだ」と言う人がいたとしたら、この人は、日本の事を全然理解していないなと思いますね。そんなの不可能ですから。  
私なんか5年間も住んでいましたが、いまだに日本の事はよく分かりません。  私は、日本に住みはじめて早々に、「他国の文化を完全に理解することは不可能だ」という事を学びました。  
だからこそ、「分からなければ質問する」「何事も学びだと思う」事を徹底したのです。
外国では、理解できないという前提で、現地の文化、現地の人たちの歴史的・文化的背景やコンテキストを  謙虚に学んでいく事が大切なのです。

佐藤:  日本の金融業界には多くの独特な慣習があります。それに戸惑ったりはしませんでしたか?

カプラン:  日本に限らず、どの国にも企業にも慣習はありますが、それを完璧に理解しようなどと思わない事が必要です。  
世の中はあまりに複雑で、すべて理解する事など不可能です。 だから「私は常に学ぶ必要がある」と 認識しておく事が大切なのです。  
外国に行ったら、現地の文化を尊重し、それを受け入れ、違いを学ぶ。 自国と比べて、この国の文化が良いとか悪いとか判断するのではなく、 ただ違うのだ、と認識すればいいのです。

エンジオイル、OEM仲間の経営塾より


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