『あなたの人生を、誰かと比べなくていい』

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五木寛之

若い頃、容姿端麗で魅力的だと言われていた人が、
歳を重ねていくうちにあまり魅力的でなくなることがある。
逆に、歳を重ねるごとに魅力的になっていく人がいます。

この違いが生じるのは何故だろうと考えてみますと、
やはり、その心のありようが顔に現れ出てきていると思います。

生きている日々の中で、
1つでも多くの“歓び”を見つけられる能力を持っている
人の顔はとても魅力的です。
その一方「悲しみ上手」もあります。

悲しみはネガティブな感情のように思われますが、
歓びと同じように、人にとって大切な心の動きです。
「悲しみ上手」…つまり“悲しみ”を
しっかりと受け止めてきた人の顔もまた魅力的です。
深い優しさがにじみ出るような、何とも言えない
いい表情を見せてくれます。

また魅力的だなと思う人には、
ひとつの共通点があります。
それは好奇心が旺盛だということです。

歳を重ねますと生きてきた分だけ
経験したことは多くなりますから、
どうしても保守的になり、
新しいものを拒否してしまう心境が生まれます。
若い人に教えてほしいと言うのが嫌だ、という人もいる。

この傾向は男性の方が強いようですが、
それはとてももったいないことです。

知らないことに出合ったら、気後れしなくていいのです。
知らないことに出合えたと歓んだ方がいい。
若い皆さんもそうです。
知らないということは、恥ずかしがることではありません。
最初は誰も知らないのですから。

それに、知らないことに出合えたということは、
新しい世界への入り口に立ったようなものです。
そう考えると、心が躍るような気がします。

私は昔、趣味は何ですかと問われると、
「知らないことを知ること」と答えていたことがあります。
少しキザな言い方かもしれませんが、
時々「このことを知るために生れてきたのではないか」
とまで思うこともあるのです。

たとえば、本を読んでいて思いがけないことを知ると、
思わず膝を叩いて大声をあげたりすることがあります。
「目から鱗が落ちる」というよりも、
本当に「心から鱗が落ちる」ような感動に
揺り動かされるのです。
その時の自分の顔を見たことはありませんが、
我ながらいい表情をしているのではないかな、と想像します。

魅力的な人は、好奇心旺盛で感情豊かです。
私はそんな人たちを見てきて、
歓びや悲しみ、あらゆる感情を
大いに揺り動かして生きていくといいのだな、と思っています。

起こってくることを味わい、
知らないことに出合えたことを歓んで、
丁寧に生きていきたいと、私も思うのです。

《好奇心は人を魅力的にし、
感情の振幅は人生を豊かにする。
「知らないこと」に出合うことは、
新しい世界への入り口にいるということ。》

好奇心がなくなったら、時代の変化を楽しむことができない。

「俺はパタパタ携帯でいい。スマホなんか使わない」とか、
「SNSなんて、ややこしいからやらない」とか。
恐ろしい勢いで、情報革命が始まっているのに、
それに興味を示さない。
好奇心がないからだ。
未来に興味がない人は、話していてつまらない。
過去のことしか話をしないからだ。

「知らないことを知ること」は何も未来だけに限らない。
およそ役に立たない雑学であろうと、
それを知ろうとする人の気持ちは若い。

知りたい、学びたいという知的な欲求を捨てたとき、
つまらない人間になってしまう。

好奇心いっぱいに、どんなことも面白がる、
知らないことは興味津々身を乗り出して聞く、
驚く、感動する人…。
そんな魅力的な人を目指したい。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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