医療差別は、もう始まっている

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診療報酬の引き下げが続き、どこの病院も経営は苦しい。病院が収益を上げるためには、短い入院期間での検査や治療によってひたすら回転率を高めねばならない。
ところが、高齢者の入院は長引きがち、利益を考えると効率が悪い。なおかつ、合併症を起こしたり、転倒して怪我を負ったりすると、病院が責任を問われる。認知症や譫妄で異常な行動を起こせば、看護師らにとって大きな負担になってしまう。

はっきり言って、今、病院にとって、高齢患者は疫病神であり、いの一番に門前払いされる対象となっている。

首都圏の勤務医「高齢者の具合が悪くなっても、何もしない事が多い。特に身寄りが無い場合は。」80代の女性が診察に来た。夫と息子に先立たれ、嫁や孫とは付き合いは無かった。この人は、悪性リンパ腫だった。
大病院は、理屈をつけて高齢者を引き取らない。こちらも、無理強いして大病院との関係を悪化させたくない。大病院が拒むならば、自分の病院に引き取るしかない。
悪性リンパ腫の治療は、薬物を用いるだけで手術はしない。指示を出せば、あとは看護師が対応するはずだ。ところが、彼はそれすらしなかった。
抗がん剤を使うと、患者を診ている看護師が嫌がるからだ。とりわけリツキシマブは投与を始めると震えや高熱を出す患者が出て来る。
看護部長から「うちでは使えません事故が起こった時に、責任を取れません。」と拒絶されているからだ。
結局、この患者には少量のプレドニゾロンを処方して自宅に返した。癌であるとは告知しないままに「この薬を飲めば、具合は良くなりますよ。」
その後、彼女は一人で定期的に通ってきた。下肢はむくみ、次第に衰弱していった。数か月後に救急車で運び込まれ、息を引き取った。
まだ、彼女は尊厳ある死を迎えれたので幸せな方である。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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