バリウム検査の利権

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バリウム検査による胃がん健診で4割ほどの罹患を見落としていた。
青森県が発表したデータは波紋を呼んだ。(2017.7)被爆が深刻だ。バリウム検査の被ばく量の平均は、2.9ミリシーベルトで、胸部X線撮影の96倍。自治体が勧めるままに、40歳から毎年受診すれば20年間で58ミリシーベルトも被爆してしまう。日本が世界一の医療被爆国と批判される由縁である。

現在、胃がんの99%はピロリ菌の慢性感染が原因であると判明している。本来なら、その感染歴がある限り、内視鏡で検査するのが合理的だ。
しかし、日本は未だにバリウム検査に固執している世界でも唯一の国だ。日本は世界に類を見ない、国を挙げたバリウム健診システムを築いた。
2015年度に胃がん健診を受けたのは237万人。その規模は、300億円にも達する巨大市場である。
健診の実務を担う「対がん教会」や「健康づくり財団」は天下りの巣窟である。

その帰結として、競争入札で決めるべき癌検診の委託先は、これらの団体へ優先的に振り向けられる。医師たちもご相伴にあずかる。国立がんセンターに、癌予防・検診・研究センターが開設されたら、主任研究員に、10年間で5億円以上の補助金が出る。バリウム健診は臨床医にも美味しい。
検診の報告書には医師のサインが必要だからだ。バリウム検査をするのは診療放射線技師で、彼らが所見を書く。「ほぼ追記する事は無く、技師が書いた報告書にシャチハタでハンコを押すだけでいい。」
「放射線の専門医でないのに、頼まれてアルバイトした。」アルバイト医師1人あたり、500~千円。1回の検診で100~200人だから、数時間で5万~20万円の臨時収入だ。

胃がんの早期診断でバリウム検査よりも、内視鏡が優れているのは、世界の常識。バリウム健診が無くなれば、研究費、講演料、対がん教会への天下りも消え失せる。利権に群がる面々は、その死守に躍起だ。利権構造の頂点にいるのは、国立がんセンター。既得権を守る手段は、胃がん健診ガイドラインの作成だ。

エンジンイル、OEM仲間の経営塾より

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